
7月21日(月)は、日本の「海の日」を記念して、2つのプログラム「ブルーエコノミーとブルーフィッシャリー」「第3回国連海洋会議の成果と今後の展望」を開催しました。プログラムの中では、6月にニースで開催された第3回国連海洋会議での議論と総括を踏まえながら、海洋課題解決に向けた世界の動きも伝えました。




ブルーエコノミーとブルーフィッシャリー
1つ目のプログラムは、イタリアから海洋関係者を招き、「ブルーエコノミー(持続可能な海洋経済)」と「ブルーフィッシャリー(環境配慮型漁業)」をテーマに、講演とトークセッションを開催しました。まず初めに、ゼリジャパン理事長である更家 悠介が開会の挨拶を行い、人類の未来を支える基盤である海の恵みを守ることが、次世代への責任だと語りました。また、大阪・関西万博を機に、海をテーマにした新たな国際協力の輪を広げたいとも呼びかけました。挨拶に続いて、サラヤメドテック CEOのエリック ル・ケール氏が、再生可能エネルギーや水素技術を活用した脱炭素型の海洋産業を実現するビジョンを提案。プラスチック回収システムとバブルカーテン漁具システムの運用実証を行なっており、バブルカーテン技術を応用した“ゼロエミッション漁船”の構想を紹介しました。この技術は、魚を生かしたまま捕獲し、稚魚を海へ還す仕組みで「命を奪わない漁業」へと繋がっていきます。フェデラツィオーネ・デル・マーレ会長のマリオ マッティオリ氏は、イタリアおよび欧州におけるブルーエコノミーの現状と展望についての講演を行いました。海洋産業がイタリアGDPの約10%を占めており、100万人以上を雇用していることも踏まえて、経済と環境の両立が進んでいることを示します。また、造船、港湾、再生可能エネルギー、漁業を統合的に支える欧州海事クラスターの取り組みを解説し、海洋は国境を越えた共通の資源であり、「ブルーエコノミーは地球規模の成長エンジン」だと語りました。





第3回国連海洋会議の成果と今後の展望
2つ目のプログラムでは、特別基調講演として、国連海洋会議での審議の立案と支援において重要な役割を果たした国連海洋特使のピーター・トムソン氏が登壇。トムソン氏は、海洋の健全性はすべての人類活動の基盤であるとし、国際的な取り組みが遅れていた現状を指摘しました。また、国連海洋会議では、海面上昇への対応や「30 by 30」の目標が進展し、2030年までに地球の30%を保護する意義を強調しました。オセアノ・アズール財団CEOのティアゴ ピッタ・エ・クーニャ氏は、日本や大阪万博での海洋保護活動を称賛し、2030年までの「30 by 30」目標達成の重要性を強調。国家間の視点だけでなく地球全体の持続可能性を考慮した行動転換が不可欠であると訴え、国際協力の重要性を示しました。
続いて、登壇者を入れ替えての2ndセッションに移ります。登壇したオセアノ・アズール財団 海洋保全担当 上級プロジェクトマネージャーのシルビア タヴァレス氏は、ポルトガルではアゾレス海洋保護ネットワークの整備や、10万平方キロメートル規模の新保護区設立など具体的成果を紹介。科学的根拠に基づいて地域社会を巻き込み、リーダーシップをもって行動することが鍵だと説きました。リスボン水族館 教育部ディレクターのディオゴ ジェナウデス氏は、ブルーエコノミーを支える基盤は教育であるとし、ポルトガルが欧州で先駆的に進めてきた「海洋リテラシー教育」を紹介。初等から高等教育まで、全ての教科に海洋を取り入れる提案を教育省に提出し、「学び・生き方に海を取り入れること」が持続可能な未来の鍵だと訴えました。
▼イベントの模様はYouTube〈BLUE OCEAN DOME 公式チャンネル〉で公開中です。ぜひご覧ください。
【#074】ブルーエコノミーとブルーフィッシャリー
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