
4月21日(月)〜27日(日)は「未来の海洋教育」をテーマに様々な活動を紹介しました。海洋教育の普及・支援事業を行う公益財団法人笹川平和財団とZERI JAPANは、セイルトレーニング、地域での海洋教育、文化遺産の継承、サンゴ礁の保全など、多角的なプログラムを通じた海との新たな関わり方を提案しています。
ブルーオーシャンへの航海~未来を共に創るセイルトレーニング~
4月21日(月)は全4部にわたる講演を行いました。第1部ではセイルトレーニングの国際団体「Sail Training International(STI)」の活動内容を紹介し、世界帆船レースの開催実績やノーベル平和賞ノミネート歴について取り上げました。日本代表の加盟団体であるISPA Japan理事長の友眞衛氏は「セイルトレーニングは、国際的な環境で活躍できる人材を育成することに繋がります」と若者主導のプログラムを広げていく意義を語ります。第2部ではISPA Japanの創設者であるロバート・センドー氏が「ヤングマリナープログラム」の理念と立ち上げの背景について紹介しました。特別ゲストとして登壇されたのは、同プログラムに参加経験があり、ウクライナ館の館長を務めるインナ・イリナ氏です。セイルトレーニングでの異文化交流を通して得た気づきや、若者同士の連帯の重要性についてお話いただきました。


第3部では公益財団法人笹川平和財団 海洋政策研究所の特任部長である小原朋尚氏が、海洋教育としてのセイルトレーニングの可能性を示しました。小原氏は船上体験によって育まれる自然への敬意や自己理解、協調性など、「冒険教育」としての価値に注目しています。続く第4部で登壇されたのは、帆船「ブルーオーシャンみらいへ」の船長を務める河本大樹氏と事務局の片山亮氏です。海洋環境学習の実例として大阪市立豊崎小学校の修学旅行を紹介し、子どもたちが主体性やチームワークを学ぶ過程について報告しています。またリコネクト株式会社の坂本那香子氏は、大人を対象とした2泊3日の研修プログラムについて紹介し、非日常の体験が内面的な変化を促すと強調しました。


SATOUMIと持続可能な海洋教育~阪南市の実践事例~
4月22日(火)は大阪・阪南市の実践事例をもとに、地域の自然環境を守りながら持続可能な学びを育む取り組みを紹介しました。第1部では阪南市 市長である上甲誠氏が登壇し、「里海」として海と共に暮らす持続可能なまちづくりとして、阪南市の全小学校で展開される海洋教育や、中学生以上を対象とした「はんなん海の学校」など、年齢に応じた多様な学びの場について共有がありました。第2部では環境省水・大気環境局海洋環境課 室長補佐の森川政人氏が「令和の里海づくり」推進に向けた戦略を提示し、科学的知見の充実、情報共有の場づくりなどを通じて、里海づくりに取り組む意義を強調しました。


続く第3部で国立環境研究所 上級主幹研究員の東博紀氏が紹介したのは、海の状況を可視化する「デジタルツイン技術」です。教育現場での活用が期待され、海洋環境についての市民の関心と理解を深めることができるツールとして注目されています。第4部では国土交通省港湾局 海洋・環境課の専門官である山田知佳氏が、海草や海藻がCO₂を吸収する「ブルーカーボン」の活用について解説し、カーボンニュートラルの実現に向けた可能性について言及しました。


各部の後半には海に学ぶ体験活動協議会 監事の岩井克巳氏とのトークセッションを行いました。海の再生と次世代の学びが交差する阪南市は、全国の海洋教育のモデルケースとしての役割を担い始めています。


未来につなぐ海の記憶~市民が創る海洋文化遺産の新たな価値~
4月23日(水)は、水中遺跡や海に沈んだ戦争遺構の価値を再発見し、市民とともにその記憶を未来へつなぐプロジェクトについて紹介しました。リーダーを務める神戸大学 准教授の中田達也氏から、プロジェクトの背景や市民参加の意義の言及がありその後、神戸大学 リサーチフェローの西川千尋氏から、ユネスコ政府間海洋学委員会(IOCーUNESCO)からのメッセージの紹介があり、国際的な支援が広がりつつある現状を伝えました。水中写真家の戸村裕行氏は、太平洋戦争中に沈んだ船の写真を映し出し、そこに残された生活の痕跡から沈没船の尊さを伝えています。


帝京大学 准教授の佐々木蘭貞氏は、水中考古学の観点から海洋文化遺産の歴史的意義について解説しました。東海大学 准教授の木村淳氏による海底遺跡を一般公開する「海底遺跡ミュージアム」の可能性の示唆を踏まえ、プロジェクトの市民メンバーを交えたトークセッションを行い、市民と専門家が協働することで、海底に眠る文化遺産の価値を掘り起こし、未来に繋ぐことができる可能性が提示されました。


サンゴ礁の未来~SceNERIUMで見るブルーオーシャンへの旅~
4月24日(木)〜25日(金)は、喜界島サンゴ礁科学研究所が「サンゴ礁の未来」をテーマに、360度にスクリーンが広がるドーム空間「SceNERIUM」を用いて、サンゴ礁の重要性と保護の必要性を発信しました。

ワークショップの参加者はドーム内で横になりながら、一面に広がる美しい海やサンゴ礁の世界を体感し、人とサンゴ礁の共生について体験しながら考える機会となりました。


サンゴと海の未来~学び、守り、つなぐサンゴ塾~
4月26日(土)は前半に、喜界島サンゴ礁科学研究所 理事長の渡邊剛氏、地球環境学研究所 所長の山極壽一氏、公益財団法人笹川平和財団 海洋政策研究所の所長である渡邉敦氏が、サンゴ礁の生態やその魅力についてトークセッションを行いました。喜界島サンゴ礁科学研究所が提供する「KIKAI College」は、喜界島を舞台に人と地球環境のあり方を考える貴重な教育プログラムとなっています。

後半は渡邊剛氏による「サンゴ塾」の紹介に続き、サンゴ礁の営みを身体で表現するワークショップを演出家 山下恵実氏の指導のもと行いました。最後に2025大阪・関西万博で提言した「いのち宣言」や、帆船で万博会場を目指す大規模プロジェクト「サンゴの方舟」について言及し、人と自然が共に生きる未来へのメッセージを共有しました。


ブルーオーシャンへの航海~セイリングを通じた環境保全と国際交流~
1週間にわたるイベントの最終日には、外洋ヨットレーサーであり、日本パラオ青少年セーリングクラブの理事としても活動する新田肇氏と、公益財団法人笹川平和財団の小原氏に登壇いただきました。


公益財団法人笹川平和財団は、セイリングを通じた国際交流・人材育成事業を展開しています。20名の若者が横浜からパラオ共和国までを航海する実践型プログラムを開催し、海洋研究開発機構(JAMSTEC)と連携したマイクロプラスチック拡散分布調査が行われ、今後も継続して帆船「みらいへ」で行った次世代向け海洋教育プログラムや、ヨットレースにおける環境調査の計画など、海洋環境の保全に向けた取り組みと国際的な友好関係の構築を進めていく予定です。


▼イベントの模様はYouTube〈BLUE OCEAN DOME 公式チャンネル〉で公開中です。ぜひご覧ください。
【#007】ブルーオーシャンへの航海~未来を共に創るセイルトレーニング~(ZERI JAPAN/笹川平和財団)
【#008】SATOUMIと持続可能な海洋教育~阪南市の実践事例~(ZERI JAPAN/笹川平和財団)
【#009】未来につなぐ海の記憶~市民が創る海洋文化遺産の新たな価値~(ZERI JAPAN/笹川平和財団)
【#010】サンゴ礁の未来~SceNERIUMで見るブルーオーシャンへの旅~(ZERI JAPAN/笹川平和財団)
【#011】サンゴと海の未来~学び、守り、つなぐサンゴ塾~(ZERI JAPAN/笹川平和財団)
【#012】ブルーオーシャンへの航海~セイリングを通じた環境保全と国際交流~(ZERI JAPAN/笹川平和財団)