
多くの家族連れで賑わうゴールデンウィークに合わせて子ども向けのワークショップを開催しました。5月5日(月祝)〜5月6日(火祝)はNPO法人ELP代表理事を務める、京都芸術大学教授の竹村眞一氏を講師に迎え、10〜18歳の子どもたちに海と地球の魅力を楽しく伝えていただきました。
デジタル地球儀「スフィア」を知る


スフィアとは科学研究機関から提供されたデータに基づき、地球上で起こる現象の推移を球体に映し出したデジタル地球儀。そんな地球儀がどの学校にも当たり前にある世界を作りたいと竹村氏はNPO法人ELPを発足させ、開発・普及に取り組んでいます。今回はBLUE OCEAN DOMEに合わせ、海にフォーカスしたワークショップを行っていただきました。
竹村氏が地球を取り囲む大気圏を撫でるようにスフィアを動かしながら、現在の地球の様子を示されました。「ロンドンの今の天気は?」とスフィアに呼びかけると、ライブカメラでロンドンの街が映し出され、リアルタイムに世界各国の都市の様子を感じることができます。朝と夜の境界線や、台風の進路、油田から出港する船の動きまで、子どもたちは宇宙飛行士になったような視点で観察しました。
地球に存在する海の大切さを実感


地球だけではなく恒星や惑星も回して見ることができるスフィア。竹村氏は太陽系の惑星について特徴を説明しながら、地球との違いについて解説されました。地球よりも太陽から遠い火星は寒くて氷になってしまう、反対に太陽により近い金星は蒸発してしまい、水がなくなってしまったと説明し、地球にこれほどの海が存在することは当たり前ではないと主張されます。また、地球を回る衛星である月と比較する中で、水は温まりにくく冷めにくい性質があるため、地球にある海が気温や気候を安定させ、生命にとって住み心地が良い環境を作り出していることを話された竹村氏。地球にある海がいかに貴重で大切なものか、改めて知る機会となりました。
地球全体で見る自然現象の影響


次は地球の生物や土地に注目しました。フィリピンの周辺から、北海道に生息するプランクトンを目掛けて進むカツオの動きをスフィアに映し出します。また、名水を生む日本の山がちな地形の理由を説明するため、地球の表面を覆うプレートを動かし、日本列島を押す様子を表しました。スフィアは過去の地震や津波がどのように進行していったかを見ることができ、津波が地球の反対側にも影響していることが明らかになります。沖縄にやってくる台風の進路を示した際には、台風が水温の高い表面と深海をかき混ぜることで水温が保たれ、サンゴ礁や生態系を維持する役割があると話されました。子どもたちに、地震や台風など自然現象が災いだけでなく、恵みをもたらすものだとして多角的な視点で自然の摂理を理解してもらうことができました。
地球の未来を担う子どもたちへ

台風の力を利用したとしてもサンゴ礁や生態系を維持し続けられない大きな力が地球温暖化です。直近5年ほどの水温上昇状況や、1950年〜2100年までの地球温暖化の推移を追いました。二酸化炭素を出し続けている今のままだと2050年には北極の氷はなくなると警告。未来予測のシュミレーションも可能なスフィアでは、全人類が脱炭素に取り組めば2100年になっても北極の氷が残るという希望も映し出します。 「人間が今、何をするかによって、地球の未来は変えられることをスフィアは教えてくれます」と語られた竹村氏。人間の存在は非常に大きく、地球に暮らす100億人近い人間がライフスタイルを変えることで明るい未来が現れると伝えられました。竹村氏の問いかけに対して考えながら、積極的に答えていた多くの子どもたち。地球の未来を担う存在として、子どもたちが自ら行動するきっかけを作ることができました。過去から未来を映し出すスフィアを使い、私たちの住む地球についてあらゆる視点から考えられるワークショップになりました。
▼イベントの模様はYouTube〈BLUE OCEAN DOME 公式チャンネル〉で公開中です。ぜひご覧ください。
【#021】海と地球(ZERI JAPAN/竹村眞一)