
4月19日(土)に基調講演『自然と共生する未来へ – 科学と「常若」の理念から考える持続可能な経済と社会』が行われました。登壇されたのは、最新の科学的視点から持続可能な経済システムの研究に注力する東京大学 名誉教授の山本良一氏と、「常若」の思想のもと生命の循環を基盤とした社会づくりに取り組む宗像大社の宮司である葦津敬之氏。後半は横浜国立大学 名誉教授の鈴木淳史氏をオペレーターに迎えたトークセッションが行われ、2者の視点から自然と共生する未来社会のあり方を考える貴重な機会となりました。


東京大学 名誉教授 山本良一氏が警鐘する「地球の限界」
エコデザインの日本の第一人者として活躍する山本氏は、講演の冒頭にボイジャー1号が捉えた小さな点のような地球や、月から見る地球の写真を提示。地球のかけがえのなさを強調し、気候変動や海洋問題などが原因となり「地球の限界」を超えてしまうと、もとに戻ることができなくなると警鐘を鳴らしました。持続可能な経済を達成するために、さまざまな企業が努力しているものの、いまだ国家レベルで環境対策を義務化している国はないのが現実だと語ります。山本氏は国単位で環境問題に取り組むために日本の自然信仰心が役立つと考え、葦津氏の講演へと繋げました。


宗像大社の宮司 葦津敬之氏が掲げる「常若」の理念
宗像大社は2017年に『「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群』として世界文化遺産に登録されました。その宮司である葦津氏は世界文化遺産登録までの経緯や、巨石を信仰の対象とする古来の自然崇拝について説明しました。また海の生態系が地球全体に大きな影響を与えると考える葦津氏は、海の再生のために「宗像国際環境会議」を設立。古きを尊びつつ常に新しく保つ思想である「常若」という言葉を造り、専門家や住人と共に海洋問題の解決に向けて取り組んでいます。「自然と一体化してきた日本人古来のアイデンティティを忘れないことが自然再生への第一歩です」と講演を締めくくりました。


2つの視点から自然と共生する未来を考える
後半は、科学的視点と日本古来の宗教的観点から環境問題を考えるトークセッションを行いました。2つの視点の「知の統合」から未来社会を構想するために山本氏は「株価や天気のように、地球の状態が毎日どうなっているのか、興味を持つ必要があります」と述べ、葦津氏は「世界中に自然崇拝が根付いていた事実を認識して共通項を探し出し、どういう心持ちで新しい技術を使っていくかが鍵です」と語りました。
世界で訴えられているさまざまな環境問題を取り上げ、各国で行われている取り組みを紹介された山本氏。古来から受け継がれる日本人の自然に対する考え方を紹介し、宗像大社を起点に行われる取り組みについて説明された葦津氏。地球の現状に目を背けることなく、明るい未来のために一つひとつ解決していくための道筋を示す講演となりました。
▼イベントの模様はYouTube〈BLUE OCEAN DOME 公式チャンネル〉で公開中です。ぜひご覧ください。
【#005】自然と共生する未来へ – 科学と「常若」の理念から考える持続可能な経済と社会(ZERI JAPAN)