〈8/4〜8/17 Event Report〉秘密研究機関イノカのサンゴ礁ラボ in EXPO

8月4日(月)からの2週間は、株式会社イノカとの共催による、テクノロジーを活用した海洋保全と未来の産業のあり方についてのシンポジウムと、サンゴを用いた子ども向けサイエンスワークショップを開催しました。

イノカ異分野共創シンポジウム

8月4日(月)に行われたシンポジウムは、株式会社イノカCOOの竹内 四季氏によるオープニングセッションで始まり、水槽内で海中環境を人工的に再現し、サンゴを飼育する技術を紹介しました。この技術は、気候変動でサンゴ礁が減少する中で、その生態を詳細に解析し、保全に繋げる上で大きな一歩となると期待されています。また同社は、企業との共同研究のほか、子供たちを対象に研究プログラムを実施するなど、教育事業にも力を入れています。

最初のトークセッションに登壇したJFEスチール株式会社の宮田 康人氏は、鉄鋼製造過程で出る副産物「鉄鋼スラグ」を活用した海洋環境改善の取り組みを解説しました。鉄鋼スラグは、サンゴや海藻の着床基盤として優れており、スラグが持つカルシウムや鉄分がサンゴの骨格形成や海藻の生育に良い影響を与えることが期待されています。また宮田氏は、ヘドロに多く含まれる有害物質である硫化水素を吸着・無害化する特性にも触れ、この技術が海洋環境改善に貢献する可能性を示し、海のCO2吸収量に着目した「ブルーカーボン」や「ネイチャーポジティブ」といった概念にも繋がる先進的な取り組みであると強調しました。

続いてのセッションでは、株式会社イノカのCTOも務める関西大学化学生命工学部教授の上田 正人氏が登壇し、専門とする再生医療技術とサンゴの再生技術を掛け合わせる新たな研究について語りました。人間の細胞を扱う技術を応用し、サンゴの再生・保全に繋げるという研究は、異分野間のコラボレーションがもたらす可能性があります。

本シンポジウムは、イノカが掲げる「自然資本」と「ブルーエコノミー」の考え方を体現するものであり、多様な専門家が集結することで、海洋保全という地球規模の課題に対し、具体的な解決策を提示する革新的な場となりました。

最後は、株式会社イノカのCDOも務める株式会社きいちのメモCEO、デザイナーの守屋 輝一氏とのトークセッションが行われ、「デザイン×海洋保全」をテーマに、デザインの力で環境課題にアプローチするユニークな試みについて語りました。

両氏は、イノカが創業当初から力を入れている、子ども向けの「環境エデュテイメント」について、水槽内の生き物と見比べながら学ぶことができるカードゲーム形式のワークショップの事例を紹介しました。

また、8月5日(火)から行われるワークショップの内容にも触れ、守屋氏は、デザインが専門的な研究を一般の人々に分かりやすく伝え、参加を促す「翻訳装置」としての役割を担っていると述べました。

秘密研究機関イノカのシチズンサイエンスプログラム 『サンゴの好きを探し出せ!EXPO EDITION』

8月5日(火)〜17日(日)の13日間は、子どもたちを対象としたシチズンサイエンス「サンゴの好きを探し出せ!EXPO EDITION」を開催しました。このワークショップは、子どもたちが「秘密研究機関イノカの見習い研究員」となり、海の保全に貢献する研究に参加することを目的としています。

ワークショップでは、まずはじめに「サンゴマスタークイズ」を行い、「サンゴは動物か植物か」「サンゴの栄養摂取方法」「サンゴが人間にとって持つ役割」などのクイズを通じて、サンゴの基礎知識や、海の環境保全におけるサンゴの重要性を解説しました。

イベントの後半は、「クサビライシ」というサンゴを用いた参加型の実験を行いました。この実験では、「餌の重さや大きさが変わると、サンゴが餌を運ぶスピードも変わるのではないか?」という仮説を立て、重い金属をつけた餌や、表面積の小さい餌を使い、子どもたちが3つのチームに分かれて取り組みました。参加者はスマートフォンでサンゴの動きを動画撮影し、どのくらいの時間で何ミリメートル動いたかを計測・記録。この結果を基に、サンゴが餌を運ぶ速さを算出し、各チームが結果を発表しました。

科学者ではない一般市民がデータ収集に協力する「市民科学(シチズンサイエンス)」のコンセプトに基づいた13日間のワークショップで得られたデータは、後日学術論文として発表され、希望する参加者の名前も掲載される予定です。イノカは、今回の研究を通じて、サンゴの食性がマイクロプラスチックによる汚染とどのような関係があるのか、という新たな環境問題の解明に繋がる可能性を示唆しました。


 ▼イベントの模様はYouTube〈BLUE OCEAN DOME 公式チャンネル〉で公開中です。ぜひご覧ください。

【#092】イノカ異分野共創シンポジウム(ZERI JAPAN/株式会社イノカ)

【#093】秘密研究機関イノカのシチズンサイエンスプログラム『サンゴの好きを探し出せ!EXPO EDITION』(ZERI JAPAN/株式会社イノカ)