〈6/9〜6/15 Event Report〉UN OCEAN x 2025 EXPO

6月9日(月)〜13日(金)の5日間、フランス・ニースで第3回国連海洋会議(UNCO3)が開催されました。BLUE OCEAN DOMEでは、この会議の様子をリアルタイムで万博会場に届けるため、担当者を現地に派遣し、世界のブルーリーダーへのインタビュー等も行いました。各トークセッションの登壇者は、国連海洋会議で取り上げられたテーマを振り返りながら、持続可能な海洋の実現に向けて今後求められる具体的な取り組み等、活発な議論を展開しました。

第3回国連海洋会議:現地スタジオトーク

国連海洋会議の会期中である6月9日(月)〜13日(金)は、会議会場とBLUE OCEAN DOMEを同時中継で結び、一般に公開しました。会議では、海洋科学、海洋汚染対策、持続可能な漁業、海洋経済、気候変動といった重要な課題について、日本を含む各国の先進的な取り組みを紹介。BLUE OCEAN DOMEからは、ZERI JAPAN理事長 更家悠介が登壇し、漁獲した魚の急速冷凍技術活用や対馬地域におけるプラスチックごみ対策の提案を行い、日本と世界が連携して具体的な解決策を示す重要性を強く訴えました。

日本人の暮らしと海とのかかわり ~神話の世界からAIの時代まで~

6月10日(火)16時からは、「日本人の暮らしと海とのかかわり」をテーマに、立教大学大学院 社会デザイン研究科 特任教授の河口眞理子氏による講演を行いました。河口氏は、日本が多数の島々からなる海洋国家であることや、約3,700種存在する海水魚のうち約25%が日本近海に生息していることを紹介し、豊かな生物多様性と海洋資源がいかに日本人の食文化を支えてきたかを解説しました。

講演の後半では、海の神を祀る住吉大社の権宮司である岡康史氏を迎え、河口氏とのトークセッションを実施。このセッションでは、日本神話と海との関連性や、生命進化の過程と国生み神話との類似点に着目し、海と人類との関係性について多面的に考察する契機を提供しました。

海、未来、そして私たちのアクション

6月14日(土)15時からは、前日に国連海洋会議が閉幕したことを受け、国際連合広報センター所長 根本かおる氏と更家悠介が講演を行いました。根本氏は、今回の国連海洋会議において「多国間主義の勝利」「科学の勝利」「国際法の勝利」という3つの成果が得られたと述べ、国際社会における協調と科学的根拠に基づく議論の重要性を強調しました。

講演の後半に実施した両氏によるトークセッションでは、利益を追求しつつ社会課題にも応えるビジネスモデルの在り方について意見を交わします。その中で更家悠介は、対馬における循環経済の実践例をはじめとする日本発の取り組みについて、国際社会への積極的な情報発信の重要性にも言及しました。

青い海と生命のあいだ

6月14日(土)17時からは、青山学院大学教授であり生物学者、作家でもある福岡伸一氏が、「動的平衡」という生命の根源的な原理を軸に、海洋環境問題を含む現代社会の課題について講演を実施しました。福岡氏は「動的平衡」について、生物が生存している間に、細胞が絶えず死んでは新しいものに入れ替わるように、分解と合成が継続してバランスを維持する考え方として解説しました。しかしその一方で、人類はこの自然のしくみに反して、プラスチックのように分解されにくい人工物を大量に作り出しており、それが環境への大きな負荷につながっていると福岡氏は指摘しました。

続いて、福岡氏と更家悠介によるトークセッションでは、人類が効率や利便性を過度に追求した結果、分解されない物質が大量生産されている現状に警鐘を鳴らしました。さらに、両氏は短期的な効率のみならず、地球環境に資する効率的かつ動的平衡の原理に即した、長期的な視点を持つ重要性について意見を交わしました。

ブルーカーボン&豊かな海を守るには

6月15日(日)15時からは、大学院大学至善館教授であり、株式会社未来創造部代表取締役の枝廣純子氏が登壇し、地球温暖化を食い止めるために重要なポイントや、ブルーカーボンの役割について講演を行いました。

講演では、温暖化対策に必要な取り組みとして、「CO2排出量の削減」「大気中のCO2回収」「吸収したCO2の固定化」という3つの要素が示されました。中でも枝廣氏は、海洋植物によるCO2吸収であるブルーカーボンの重要性が強調され、吸収したCO2が大気に再放出されないよう、炭化などの方法で確実に固定化する必要があると解説しました。


 ▼イベントの模様はYouTube〈BLUE OCEAN DOME 公式チャンネル〉で公開中です。ぜひご覧ください。

【#049】一つの海洋科学会議 – その成果と課題(ZERI JAPAN/笹川平和財団)

【#050】ブルーエコノミー・ファイナンス・フォーラム – 結果概要と将来展望(ZERI JAPAN/笹川平和財団)

【#052】UNOC 3 サイドイベント 持続可能な海洋の実現に向けた社会協働と国際連携 – ニースから世界へ向けた戦略提言(ZERI JAPAN/笹川平和財団/日本経済新聞社)

【#053】UNOC3 – 民間企業の取り組みと社会協働(ZERI JAPAN/笹川平和財団)

【#054】UNOC3 – 成果、課題、将来展望(ZERI JAPAN/笹川平和財団)

【#051】日本人の暮らしと海とのかかわり ~神話の世界からAIの時代まで~(ZERI JAPAN)

【#055】海、未来、そして私たちのアクション(ZERI JAPAN)

【#056】青い海と生命のあいだ(ZERI JAPAN)

【#057】ブルーカーボン&豊かな海を守るには(ZERI JAPAN)