
2025年春、韓国・釜山で開催された「第10回 私たちの海洋会議(Our Ocean Conference)」には、各国政府関係者、研究者、市民団体、そしてユース代表が集い、持続可能な海洋の実現に向けた取り組みが幅広く議論されました。
5月2日(金)に行われた本イベントでは、釜山会議の成果を振り返るとともに、気候変動、海洋汚染、生物多様性の喪失といった地球規模の課題に対して、国際社会がどのように連携して取り組むべきかを再確認。また、6月にフランス・ニースで開催予定の「第3回 国連海洋会議」へ向けた展望や期待も語られました。
【登壇者】
・スティーブン・ビクター氏(パラオ共和国 農業・漁業・環境大臣)
・トーステン・ティーレ氏(グローバル・オーシャン・トラスト 創設者 兼 事務局長)
・キラパルティ・ラマクリシュナ氏(ウッズホール海洋研究所 海洋政策センター長 兼 米国海洋・気候政策上級顧問)
・ジェシカ・ニューフィールド氏(持続可能な海洋連盟〈SOA〉 海洋リーダーフェローシップ 主任プログラム・マネージャー) ・小林正典氏(笹川平和財団 海洋政策研究所 上席研究員)


釜山会議の振り返りと今後の展望
海洋国家パラオを代表して登壇したビクター氏は、BBNJ条約(公海の生物多様性に関する条約)の早期批准の必要性と、2030年までに海洋の30%を保護区域とする「30by30目標」の達成に向けた行動の加速を強く訴えました。また、深海採掘がもたらすリスクに対し慎重な姿勢を示し、小島嶼国にとって海洋の健全性は経済・生活・文化の根幹に関わると語りました。
続いて、ラマクリシュナ氏は、国連海洋会議の意義として、政府間交渉だけでなく、民間企業、研究機関、市民社会を巻き込んだ「実行中心の場」としての進化を評価。過去10回の会議を通じて累計1,600億ドル以上のコミットメントが表明されており、今回の釜山会議でも新たに約100億ドルの誓約がなされ、その多くがブルーエコノミー(持続可能な海洋経済)に充てられていることを紹介しました。


ティーレ氏は、釜山会議の成果を「説明責任の明確化」「革新的な海洋金融」「地域主導の実践的解決策」の3つの視点で総括。特に韓国によるブルーボンドの発行や、フィリピンが導入した小規模漁業者向け保険制度など、アジアからの先進的な取り組みを紹介し、多様なパートナーとの連携による制度設計と投資の必要性を強調しました。
また、ニューフィールド氏は、持続可能な海洋連盟(SOA)が主催した「第8回ユース・リーダーシップ・サミット」の成果を報告。35カ国から集まった若者たちとともに策定した「HOPE(Holistic Ocean Pledge)」を紹介し、若者が政策形成の“傍観者”ではなく“担い手”として参画する意義を訴えました。意思決定の場への正式な参加や資金支援など、具体的な制度整備の必要性にも言及されました。

会議への期待
登壇者たちは共通して、「気候変動対策と海洋政策は切り離せない」と強調しました。6月にニースで開催予定の「第3回 国連海洋会議」や、年末の「気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)」に向け、海洋保全と経済発展の両立を実現する実効的な国際協調の枠組みづくりが求められています。
特に、島嶼国や若者などの声を政策に反映させる「包摂的ガバナンス」や、「科学と政策の接続」「資金調達における新たなスキーム」の構築が、今後の重要テーマとして浮かび上がりました。
また登壇者は、2025大阪・関西万博において、BLUE OCEAN DOMEが海洋政策を語り合う場として機能していることを高く評価。このような対話の場の継続こそが、海洋保全における国際的な機運を高める鍵であり、2025年はその転換点になるとの期待が語られました。
▼イベントの模様はYouTube〈BLUE OCEAN DOME 公式チャンネル〉で公開中です。ぜひご覧ください。
【#019 】釜山海洋会議の成果と国連海洋会議への展望(ZERI JAPAN)