〈4/28〜5/1、5/4 Event Report〉瀬戸内アーキペラゴ:多島海で、未来の豊かな海とは何かを考える

4月28日(月)から5月4日(日)にかけては、多島海である瀬戸内海の魅力を様々な視点から発信するとともに、豊かな海を未来へと継承していくために何をしていくべきかを、講演やワークショップなどを通じて考察しました。

大阪湾におけるネイチャーポジティブと自然共生サイト

4月28日(月)13時からは環境省近畿地方環境事務所との共催で、「ネイチャーポジティブ」と「自然共生サイト」をキーワードに講演を行いました。 「ネイチャーポジティブ」とは、生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せようとする国際的な目標のことです。環境省は目標の実現に向け、「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域」を「自然共生サイト」として認定しており、その中から大阪湾の沿岸域で保全活動を行っている「NPO法人大阪湾沿岸域環境創造研究センター」、「関西エアポート株式会社」、「新庄漁業協同組合」を紹介。関西にお住まいの方に、環境保全活動が身近で行われていることを認知していただき、関心を持っていただきたいという願いを込めて発表が行われました。

せとうち千年の船旅ものがたり

4月28日(月)15時からは、古くから「海の路」として発展してきた瀬戸内海の魅力について、トークセッションを行いました。登壇者には船旅のスペシャリストである、一般社団法人せとうち観光推進機構 専務理事の坂元浩氏、株式会社クリエイション 代表取締役の新谷幸雄氏、そしてSYLグループ創設者兼社長、アジア太平洋スーパーヨット協会(APSA)会長のNigel Beatty氏が登場。司会は瀬戸内海の出版社として、瀬戸内海の島々を巡ってきた株式会社SETOUCHI SEAWIND 代表取締役の小西智都子氏が務めました。 トークセッションでは、「船」に焦点を当て、過去・現在・未来の3つの時代の船旅を紹介。遣唐使船の頃から幕末までの船旅の変遷や、日本の外からの視点で見た瀬戸内海の魅力、スーパーヨットで巡る瀬戸内海の新しい船旅の展望などについて語られました。

食から地域復興の挑戦 瀬戸内こだわりの牡蠣

4月29日(火)13時からは、勇和水産代表取締役 藤井和平氏、その御子息の藤井勇人氏、株式会社みずべの坂本晃一氏にご登壇いただき、食からの地域復興をテーマに、岡山県笠岡市の離島・北木島で行われている取り組みについて講演を行いました。 勇和水産は牡蠣による地域振興に挑んでおり、2024年にドバイで行われた世界有数の食品イベント「Gulfood 2024」に出展。冷凍/冷蔵部門でグランプリを受賞することで、世界に北木島の牡蠣を広めることに成功されました。しかし、50年後の瀬戸内海の未来を考えた時に、海洋環境の悪化や漁獲量の減少などが既に進行していることを知り、海を「育てる」取り組みが必要と痛感。地域の学校や株式会社みずべをはじめとした民間企業と協力し、地域みんなで海を「育てる」活動を行い、持続可能な漁業の推進を行っていることが伝えられました。

ウミガメの聖地 日和佐(徳島) その歴史と継承

4月29日(火)15時からは、日本ウミガメ協議会会長、四国水族館館長の松沢慶将氏と、日和佐うみがめ博物館カレッタ館長の平手康市氏によるトークイベントを行いました。徳島県美波町にある日和佐・大浜海岸になぜウミガメ専門の博物館があるのか、どうしてウミガメの聖地と呼ばれているのか、などが詳しく語られました。 イベントの終盤には、現在徳島県でウミガメの産卵数が顕著に減少し、「ウミガメの聖地」存続が危ぶまれていることを発表。調査の結果、徳島から和歌山に産卵地変更が行われている可能性が高く、LED照明が普及したことと、大浜海岸上空に「もや」がかかりやすいという特徴が合わさり、ウミガメにとって空が明るくなりすぎる「光害」が起こっていることが原因と解ってきました。街灯などの光量を下げて、カットルーバーなどを照明に設置することができれば光害が抑制できるということで、「ウミガメの聖地」が未来にも続くように対策に取り組んでいきたいと思いを伝え、トークイベントは締めくくられました。

さとうみの命と人の業~瀬戸内海が凝縮された里海に囲まれた島“江田島”~

4月30日(水)は、広島県・江田島の豊かな里海に生きる多様な生命と人々の営みについて「個性」と「つながり」をキーワードに、「生命」「テクノロジー」「環境問題」の3つのセッションに分けて講演を行いました。

「生命」のセッションではさとうみ科学館館長の西原直久氏により、江田島の自然環境や、「カブトガニ」「ハクセンシオマネキ」にスポットを当てながら、瀬戸内海の生物多様性について解説されました。

「テクノロジー」のセッションでは株式会社nu.より、関西大学田實研究室の技術協力のもとAIやセンサーを駆使して制作された、「ハクセンシオマネキ」の命のリズムを体感できる映像の公開が行われたほか、美術作家のイタイミナコ氏による体感型のワークショップが行われました。 「環境問題」のテーマでは一般社団法人フウドが、プラスチックゴミなどが海岸に漂着する海洋ゴミ問題について発表。海ゴミを妖怪に例えた「海ごみ妖怪」プロジェクトを行っていることなど、環境問題への活動を紹介されました。

瀬戸内からSETOUCHIへ

5月1日(木)は、関西経済会、四国経済界、行政のキーマンにご登壇いただき、「世界の瀬戸内」をいかに実現するかについて語っていただきました。

前半は、国土交通省関東地方整備局 副局長 森信哉氏、関西エアポート株式会社 代表取締役社長 山谷佳之氏、四国電力株式会社 特別顧問 佐伯勇人氏、株式会社竹中工務店 取締役会長 難波正人氏が一名ずつ講演を行い、それぞれの立場から瀬戸内の観光振興について提案が行われました。 後半は、森氏、山谷氏、佐伯氏、難波氏によるパネルディスカッションを開催。大阪湾から瀬戸内に繋ぐ海のゴールデンルートを整備し、瀬戸内を新たなエリアブランド化していくために何が必要か議論しました。

海から眺めるせとうちエリアの魅力 ~地域と共に創造する未来~

5月4日(日)は、西日本旅客鉄道株式会社 地域まちづくり本部 地域共生部次長の後藤学氏と、瀬戸内海汽船株式会社 常務取締役 川渕紀和氏のトークセッションを開催。せとうちエリアの新たな周遊ルートを創出する観光型高速クルーザー「シースピカ」や、「瀬戸内海の移動を楽しむ皆の公園」をテーマにデザインしたフェリー「シーパセオ」、広島から福山の間をゆっくりと走り、瀬戸内海の美しい景色を楽しめる観光列車「エトセトラ」の紹介を行いました。また、瀬戸内海の風景を気軽に楽しめるツールとして、JR西日本が運営している「せとうちパレットプロジェクト」のホームページを紹介。「シースピカ」から360度見渡せるカメラで撮影した映像が、スマートフォンやパソコンから閲覧できることが伝えられました。


▼イベントの模様はYouTube〈BLUE OCEAN DOME 公式チャンネル〉で公開中です。ぜひご覧ください。

【#013】大阪湾におけるネイチャーポジティブと自然共生サイト(ZERI JAPAN/近畿地方環境事務所)

【#014】せとうち千年の船旅ものがたり(ZERI JAPAN)

【#015】食から地域復興の挑戦 瀬戸内こだわりの牡蠣(ZERI JAPAN/勇和水産)

【#016】ウミガメの聖地 日和佐(徳島) その歴史と継承(ZERI JAPAN/日本ウミガメ協議会〈NPO〉、日和佐うみがめ博物館カレッタ〈美波町〉)

【#017】さとうみの命と人の業~瀬戸内海が凝縮された里海に囲まれた島“江田島”~(ZERI JAPAN/さとうみ科学館・株式会社nu./関西大学・一般社団法人フウド)

【#018】瀬戸内からSETOUCHIへ(ZERI JAPAN/関西経済同友会)

【#020】海から眺めるせとうちエリアの魅力 ~地域と共に創造する未来~(ZERI JAPAN/西日本旅客鉄道株式会社・瀬戸内海汽船株式会社)