過去に例がない建材を使用した
サスティナブルなパビリオンを施工

BLUE OCEAN DOMEを裏側で支える人たちの想いをインタビューする「BOD Professionals」。第二弾は、大和ハウス工業株式会社 2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)推進室の石黒 智也氏。 世界的に活躍する坂茂氏が建築設計を担当し、竹集成材、カーボン(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)、紙管の建築素材を構造体とする3つのドームで構成された「BLUE OCEAN DOME」。世界的にも類をみないパビリオン建築の実現に尽力した石黒氏の、約1年半にわたる挑戦の日々と現在の想いについて語ってもらいました。
大阪・関西万博というチャレンジの舞台で
自身の力を試したいと社内公募に立候補
大阪・関西万博のプロジェクトに携わる人材について、社内公募があったのが2023年4月。それまで、神奈川県内の仕事が中心だったので、新しい土地で自分の実力を試したい、万博という大きなチャレンジの場でスキルアップや視野を広げたいと思い、立候補しました。無事社内公募の合格が決まり、単身で2023年8月1日に赴任。そこから、2025年3月の引き渡しまで約1年半に渡って、約15人のメンバーと共に日々精力的に取り組みました。 設計・施工の両方を大和ハウスが担当するスキームが多いなか、世界的に有名な建築家が設計したパビリオンの施工を担当。今までは、大和ハウスのコンセプトである長く使ってもらうための建築に携わってきましたが、今回は万博会期中の約半年間のみ使用する仮設という点が大きな違いでした。
過去に例がない建材を構造体として使用し
世界的な巨匠の設計を具現化するため試行錯誤

今回のパビリオンは3つのドームで構成されています。ドームAは竹の集成材、ドームBはカーボン(CFRP)、ドームCは紙管という、過去に例がない建材を構造体として使用。大和ハウスとしても私自身も初めての経験だったので、どうすればスムーズに建てられるのか試行錯誤の連続でした。
特にドームCは二重構造になっていて、中と外の層が1m離れているので、安全かつ効率的に建てることに苦労しました。当初は1か月半で建つ予定でしたが、素材が紙ということで天候にも苦慮しながら、実際は3か月かかりました。ドームAも二次元にしか曲げられない竹の集成材を、どうやってアーチ状に組んでいくかミリ単位の作業でしたし、ドームBはカーボンの知識を得るところからはじめて、どうやって曲げるか、強度を出すか、工場での生産と施工をほぼ同時に進めていった感じです。坂先生のイメージを具現化する上で、モックアップを用いてディスカッションしましたが、ひとつ一つに対してこだわりを持って設計されていたので、希望を叶えるにあたって安全面、費用面と工程面も配慮しながら、ボジティブな意味で折衷案を探りながら施工していきました。本当に現場の職人さんの頑張りがあったからこそ実現したと感謝しています。 壁が建つ場所ではない範囲は、プラスチックの樹脂板にベニア合板を貼ってコンクリートを極力使用しないなど、万博終了後の解体・移築まで考えられたサスティナブルな建築になっているのも特徴です。
水の展示や映像コンテンツはもちろん
建築物に興味がある方は絶対に立ち寄ってほしい
先日無事に引き渡しを終えて安堵感もありますが、本番はこれからなので、ZERI JAPANの皆様に快適に使っていただけたら嬉しいです。来場者にとっては、ドームAの水の展示やドームBのインパクトある映像コンテンツなど見どころはたくさんあると思いますが、坂先生の作品を大和ハウスが施工したパビリオンなので、建築物に興味がある方だったら絶対に立ち寄っていただきたいと思います。
周辺には、バンダイナムコ(ガンダム)や吉本興業など名の通ったパビリオンがあって、BLUE OCEAN DOMEのイメージが湧かないかもしれませんが、中に入ったら想像以上の建築物を見ることができるのでご期待ください。 私は開幕後に、大屋根リング下の人目のつかないところでドームを眺めていると思いますが、ドームCから笑顔で出てくる人たちを見たら、言葉に表せない感情が込み上げてくるのだろうなと思います。