ポイント
  • 工業港の振興には市民の理解が必要。珍しい船が寄港するイベントを通じて、市民が港に親しみを持つことができる。
  • 帆船は停泊中でも華があり、集客のメリットがある。
  • 〈みらいへ〉の一番の魅力は、来場者に提供できる体験の自由度。

静岡県富士市様では、市内にある田子の浦港の振興イベント「田子の浦ポートフェスタ」に「帆船 BLUE OCEAN みらいへ」を毎年ご招致いただいています。第9回田子の浦ポートフェスタの会場で、企画・運営を行なわれている大橋様にお話を伺いました。

富士市産業交流部 産業政策課 港湾振興室 主査 大橋俊介 氏

— 田子の浦ポートフェスタの歴史や、開催のねらいについて教えてください。

田子の浦港は工業港で、普段は岸壁に立ち入ることができません。市民の方に港への親しみを持ってもらいたいとの思いから、2014年から田子の浦ポートフェスタを始めました。毎年開催し、悪天候やコロナ禍での中止もありましたが、今年(2024年)で第9回になります。港の維持にはお金もかかるため、市民の理解が欠かせません。このようなイベントを開くことで、市民に対して港があることを周知し、その経済効果にも目を向けていただきたいと思っています。

— 集客状況はいかがですか。

普段見られない船が寄港することで、賑わいを作り出せています。今年は3,000人くらいの来場者を想定しています。普段は人が集まる港ではないので、近隣の企業様に臨時駐車場のご協力をいただいたり、最寄駅からシャトルバスを運航をして対応しています。来場者の多くは富士市内からですが、〈みらいへ〉の体験航海には東京や神奈川からの応募もありました。

— 体験航海の乗船募集は事前の抽選にされていましたね。

今年は「帆船 BLUE OCEAN みらいへ」の他に、海上自衛隊の「多用途支援艦えんしゅう」と、清水港の「帆船オーシャンプリンセス」が寄港していますが、〈みらいへ〉と〈オーシャンプリンセス〉の体験航海は抽選で、〈みらいへ〉と〈えんしゅう〉の停泊中の一般公開は誰でも乗船できるようになっています。体験航海の抽選倍率は多い回で15倍もありました。せっかく当選したのに気軽にキャンセルされる方がいらっしゃると勿体無いなと思います。一方で当日先着順にした場合、会場に来たのに乗れなかった方のケアも考える必要があるので難しいですね。抽選ではなく来てパッと乗れる船を充実させていくことも課題です。

— 経済効果についてはどのようにお考えでしょうか。

イベントそのものの経済効果は微々たるものですが、田子の浦港の認知度を上げて、工業港として荷役の船が入ることについて市民の理解を得て、港の振興をしていきたいと考えています。またクルーズ客船の誘致も始めており、2023年には4回、客船の寄港がありました。富士山を真正面に見ながら入ってくる港という、田子の浦港の唯一無二の魅力をアピールしていきたいです。

— 帆船みらいへを招致いただいた理由や、良かったことを教えて下さい。

開港50周年記念事業として開催した2016年には帆船日本丸が寄港し、見学することができましたが、〈みらいへ〉に関して特に良いと思っているのが、その自由度の高さです。誰でも乗れて、バウスプリット渡りなどのアクティビティも楽しめますし、体験航海で一緒にセイルを広げられる帆船となると〈みらいへ〉の他にありません。そして帆船は停泊中でも華があります。これは自衛艦やクルーズ船とは違う魅力です。また港の大きさや水深の制約からも、田子の浦に来てくれる船を探すのは大変で、自衛隊も大型艦は入れません。〈みらいへ〉の大きさも、田子の浦港のキャパシティに対して適していました。

— 他の自治体様でもこのような形のイベントを開催されると良いと思われますか。

田子の浦港に限らず、港というものについて、日本には工業港が多く、親しみが少ないのです。このようなイベントを通じて市民に親しみを持ってもらうことは、港の振興のために良いことだと思います。「田子の浦ポートフェスタ」を始めてから、近隣の大井川港や御前崎港に波及していった経緯もあります。招致する船として、帆船には華があり、集客のメリットがあると思います。

富士山をバックに入港する帆船みらいへ。フォトスポットになっている「田子の浦」の文字モニュメントは市の職員による手作りとのこと。
体験航海の乗船者を乗せ、出港する帆船みらいへ