スターリング 積雪の課題解決に貢献

言葉で説明されてもちょっとピンとこない時は「見る」のが一番ですね。温度差を利用して動く「スターリングエンジン」ですが、イギリスのKONTAX製の「超・低温度差スターリングエンジン」は、なんと手のひらに載せても回ります。

ABC science japan: KONTAX STIRLING ENGINE (KS90R Solar Ross LTD)

ディスプレーサーと呼ばれる仕切り板の上下の温度差が5~10℃程度があれば半永久的に回り続けるそうです。面白いですね。

このエンジンは、スコットランドの牧師で発明家のロバート・スターリングが発明しました。父親がロータリー脱穀機を発明したマイケル・スターリングということもあってか、彼はもともと工学に興味があったのですが、神学を学んで牧師になる道を選びました。1816年、26歳のスターリングは牧師になります。この頃は蒸気機関が主な動力源になっていましたが、効率を求めてボイラーの高圧化が進む一方で蒸気缶の堅牢性が追いついておらず、高圧に耐えきれなくなった蒸気缶が爆発するという事故が度々起こっていました。初めて赴任した教区で多くの人々が犠牲になっている状況に直面して心を痛めたスターリングは、より安全で効率の良いエンジンを作ることを決意したと言われています。ここから生まれたのがエコノマイザー(Economiser、節約機)という外燃機関で、のちにスターリングエンジンと呼ばれるものです。シリンダー内のガスを外部から加熱・冷却し、そのガスの膨張・収縮によってシリンダーを動かします。

いま、このスターリングエンジンを応用した「雪発電」の実証実験が北海道で行われようとしています。電気通信大学が中心となり、バイオマス熱と雪の温度差を使ってエンジンを回して発電しながら、除雪や水不足の解決にも役立てようという、少なくとも一石三鳥の欲張りなプロジェクトです。

電気通信大学:【ニュースリリース】~「Value up NISEKO 2030」プロジェクト第7弾~ ニセコにおける環境取組み「雪発電」社会実証実験を実施(2025年2月20日

小規模な施設で発電可能な上、豪雪地帯に住む人々の悩みの種でもある「積雪」をうまく活用できるようになったら、日本だけでなく世界でも貢献できますよね。いつの日か、スターリングの生まれたスコットランドでこのシステムが導入される日が来たら、ちょっと素敵な話ですね。

さて、カーボンニュートラルを「地域の可能性と挑戦」という観点から見るセミナーが開催されるのでご案内します。

名称:「カーボンニュートラルをめぐる地域の可能性と挑戦 」
日時:2025年3月11日(火)15:00~17:45  
会場:野村コンファレンスプラザ日本橋(中央区)
主催:学術知共創プログラム事業「重層的アクターの協調を生み出す気候変動ガバナンスの構築」  
参加費:無料  

主な内容:下記HPより抜粋  
○ 開会の辞
石川知子(名古屋大学大学院国際開発研究科 教授)

○ 基調講演 「日本の林業再生と地域循環経済創出」
隅修三(東京海上日動火災保険株式会社 相談役、経済産業省総合資源エネルギー調査会 会長)

○ パネル1 「地方創生に関連する最近の法・実務とエネルギー転換への示唆」
モデレーター: 
・前田博(森・濱田松本法律事務所外国法共同事業 客員弁護士)
パネリスト:
・新井剛(早稲田大学商学学術院 教授)
「事業性融資推進法と地方創生-エネルギー転換関連事業への示唆」
・原田文代(日本政策投資銀行 常務執行役員)
「地域×トランジション-地域産業と地域社会が主体となるトランジション」

○ パネル2 「カーボンニュートラルに向けた地域の取り組み」
モデレーター:
・堀口宗尚(三井物産電力事業株式会社 社長補佐、京都大学 特命教授)
パネリスト:
・在間敬子(京都産業大学 学長)
「企業と地域のカーボンニュートラルの取り組み-川崎市臨海部の水素戦略を事例として」
・島美穂子(森・濱田松本法律事務所外国法共同事業 パートナー弁護士、
 経済産業省総合資源エネルギー調査会 資源・燃料分科会 脱炭素燃料政策小員会 委員)
「水素社会推進法に基づく拠点整備支援が地域にもたらす可能性」

○ 閉会の辞 藤原帰一(東京大学 名誉教授)

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