加西市 空と歴史と未来と

救難飛行艇US-2の開発・製造で知られる新明和工業の前身、川西航空機。戦前、世界最高峰の飛行艇と言われた「二式大型飛行艇」や、戦闘機「紫電」「紫電改」などを製造していました。1943年に現在の兵庫県加西市に姫路海軍航空隊基地が建設され、その飛行場では川西航空機が製造した戦闘機の試験飛行も行われました。戦争末期には、この航空隊員から編成された特攻隊「白鷺(はくろ)隊」が出撃して行きました。

この飛行場は鶉野(うずらの)飛行場と呼ばれ、いまでもその残影を見ることができます。1200mのコンクリート滑走路がまっすぐに伸び、周辺では掩体壕、巨大防空壕などの戦争遺跡群を見学できます。2022年に開設された平和学習施設「soraかさい」には、多彩な資料とともに戦闘機の実物大模型が展示されています。

その加西市で、2014年ごろから気球が飛び始めるようになります。広がる平野と上空を吹く穏やかな風が、気球のフライトに適しているようです。2016年3月に加西市で「第22回熱気球全日本学生選手権」が行われたことを機に気球が地域の活性化につなげることに気づきます。そこからの仕事が早い加西市でした。2016年9月には全国で初めてとなる「気球条例」を制定し、「気球の飛ぶまち加西」として全市を上げて
取り組むようになっていきます。

条文なんてふつうは読んで面白いものではありませんが、この「気球の飛ぶまち加西条例」の前文を一部だけ引用しておきます。

「かつて、鶉野飛行場から戦地に飛び立った若人たちも同じ風景を目に残していただろう。そして今、加西の空に穏やかに吹き渡る風に乗り飛ぶ気球は、私たちの希望と可能性を大きく膨らませ、新しい時代の夢の広がりを見せてくれる。
ここに、加西の大空を舞う気球に、市民一人ひとりの夢の実現と元気あふれる地域社会の未来の創造を託すため、本条例を制定する。」

この加西市は、脱炭素でも一歩先を進んでいます。2022年度に環境省の第2回脱炭素先行地域に選定されました。
・既存住宅200戸を対象に断熱リフォームを行なって太陽光発電・蓄電池の導入。
 新築住宅(次世代ZEH+)40戸を新規開発。
・市内2エリアにスマートグリッドを構築。
・コミュニティバス(3台)、公用車(11台)をEV化し、再エネ100%のEVステーションを整備。
・平和学習施設「soraかさい」に、グリーンスローモビリティ(1台)を導入し、蓄電池を併設した再エネ100%のLED街路灯(160基)を導入。
などの取り組みを行なっています。

去年11月には株式会社脱炭素化支援機構(JICN)が地域エネルギー会社「かさいスマートエナジー」に出資することが決まりました。
https://www.jicn.co.jp/wp-content/uploads/2024/11/JICN-news-release-20241119.pdf

加西市の人口は42,000人ほどですが、地域の自然条件を活用し、歴史を大切にしながら、未来を見据えて歩んでいるんですね。

さて、一般社団法人日本サステイナブルコミュニティ協会が、脱炭素の先行事例についてセミナーを開催するのでご案内します。

名称: 脱炭素先行事例の “いま” を知る〜多様な地域づくりと脱炭素〜
日時: 2025年2月21日(金)13:30〜16:30 
会場: 都道府県センター(千代田区)/オンライン 
主催: 一般社団法人日本サステイナブルコミュニティ協会
参加費: 無料 

主な内容:下記HPより抜粋 

脱炭素事業を考えた時、「そもそも計画の立て方がわからない」「計画を立てても具体策に取り組めない」「地元での脱炭素事業がイメージできない」、そんな風にお困りになったことはありませんか?そんな声にお応えして、環境省の脱炭素先行地域事業などで地域づくりに取り組む自治体・金融機関・環境省の皆様にご登壇いただき、それぞれの視点から事業のポイントや課題を共有します!いかに計画を立て、どんな課題にぶつかり躓きながら、事業を進めてきたのか。先行事例の”いま”を知ってみませんか。

登壇者:
山下 敦史 氏(加西市環境部 環境課)
加藤 翔 氏(日本政策投資銀行 地域調査部)
高橋 成之 氏(東北銀行みらい創生部)
近藤 貴幸 氏(環境省大臣官房 地域政策課)
ほか

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