新しい国家建設に向けて国民の意識改革を促すべく、福澤諭吉が書いたのが「学問のすゝめ」(初編 明治5年)でした。彼はまた、経済を発展させるためには簿記の普及が重要だと考え、日本で最初の複式簿記の教本「帳合之法」(ちょうあいのほう)(明治6年)を書きました。これはアメリカの学校用の簿記の教科書”Common School Book-keeping”を、福澤流の熱いメッセージを交えながら翻訳したものでした。英語の”bookkeeping”については、当時はまだ「簿記」という言葉がなかったので、商店などで使われていた「帳合」という言葉を訳語にあてたそうです。
出て行くもの、入ってくるもの。常に正確な数字を把握することが重要なんですね。これは気候変動対策においても同じですね。どれだけのCO2を排出しているのか、どれだけ削減しているのか。これを把握しないことには始まりません。
最近、北海道大学と東京大学が炭素クレジットの計算に大きく貢献する研究成果を発表しました。
北海道大学:日本全土の高解像度森林炭素蓄積量マップ作成に成功~我が国の炭素クレジット計算に貢献~(農学研究院 教授 加藤知道)(2024年9月20日)
衛星観測・航空機レーザ測量・AIを組み合わせたことによって、日本全国の森林の炭素蓄積量を1ピクセルあたり10m x 10mの解像度でマッピングできたとのことです。これまでの解像度が100m x 100mだったそうなので、これはもう別次元の話ですよね。このマップはJAXAのウェブサイトで公開されています。
ということは、極端な例ですが、これまでだったら30m x 30m程度の小規模な植林を行なっても「いやあ残念ですが、空から見たらそんなの勘定に入れられませんよ」と言われかねなかったけど、これからは胸を張って「どうぞこのJAXAのマップでお確かめ下さい」と言えるようになるということでしょうか…。だとすると小さな努力も認められることになり、これはなかなか面白いですよね。
さて、環境省などの主催で気候関連データの活用や「リスクと機会」に関するシンポジウムが開催されるので、ご案内します。
名称: 気候変動リスク産官学連携ネットワーク公開シンポジウム ~サステナビリティ情報開示における気候関連データの活用と「リスクと機会」への実践~
日時: 2024年11月27日(水)13:30~16:30
会場: オンライン
主催: 環境省、文部科学省、国土交通省、金融庁、国立環境研究所
参加費: 無料
主な内容:下記HPより抜粋
開会挨拶 環境省
【第1部:基調講演】
○気候変動に関する企業の情報開示の最新動向 東京大学未来ビジョン研究センター
教授 高村 ゆかり氏
【第2部:気候変動における「リスク」と「機会」の評価と対応策】
○ 科学的根拠をもとにした財務影響の分析・評価
環境戦略「EARTH FOOD CHALLENGE 2030」
日清食品ホールディングス株式会社
経営企画部 次長 斉藤 圭氏
○ TCFD提言の枠組みを活用した「リスクへの対応」と「機会の獲得」
住友化学株式会社
サステナビリティ推進部 主幹 木村 雅晴氏
○ TCFD情報開示「リスク」と「機会」を踏まえたグループ環境ビジョン
SHIMZ Beyond Zero 2050
清水建設株式会社
環境経営推進室 企画部 部長 伊東 浩司氏
【第3部:企業における気候関連データの活用】
○ 建築分野における将来気候データの活用について
株式会社竹中工務店
技術研究所 建設基盤技術研究部 都市環境グループ 研究主任 畔上 泰彦氏
○ ESG評価機関における気候関連データの活用
S&P Global Sustainable1
マネージングディレクター APACヘッド 大町 興二氏
【第4部:パネルディスカッション】
○ 気候関連データの活用と適応策の実践
モデレーター:国立環境研究所 気候変動適応センター 気候変動影響観測研究室長 岡 和孝
パネラー:登壇者の方々
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