石油や天然ガスの「パイプライン」という言葉はよく聞くものの、実際にどのように作られているのか見たことがなかったので、これはなかなか面白い動画でした。
これはアドリア海横断パイプライン(Trans Adriatic Pipeline, TAP)の建設時の様子です。ギリシア・トルコ国境からアルバニア、アドリア海、イタリアへとつながっていて総延長878kmにも及びます。標高2,100mの山々にも、水深810mの海底にも敷かれ、55,000本のパイプが使われています。建設には4年半かかりましたが、2020年11月に商業稼働が始まりました。これによってアゼルバイジャンから欧州まで天然ガスを輸送する総延長3,420kmの「南ガス回廊」(South Gas Corridor)が完成しました。
当初の輸送能力は年間160億立方m。そのうち60億立方mはトルコに、100億立方mは欧州向けでした。ロシアによるウクライナ侵攻後の2022年7月に、EUはアゼルバイジャンと「EUへの天然ガス供給量の拡大に関する覚書」を締結し、2027年までに年間200億立方mをアゼルバイジャンから輸入することで合意しました。欧州の天然ガス供給源の多様化を進める上で重要なステップでした。
現在、アゼルバイジャンの首都バクーで国連気候変動会議(COP29)が開催されています。そのオープニング・スピーチにおいて、20年以上同国大統領を務めているイルハム・アリエフ氏が、以下のように話しました。
「石油であれ、ガスであれ、風であれ、太陽であれ、金であれ、銀であれ、銅であれ、それらは全て天然資源である。いかなる国も、それらを保有していることを非難されるべきではないし、それらを市場に持ち込むことを非難されるべきではない。なぜなら市場がそれらを必要としているから。人々が必要としているから。これが私のメッセージだ。COP29の議長として、もちろんグリーン・トランジションを強く支持するし、私たちはそのように行動している。だがしかし同時に、私たちは現実的でなければならない」
それぞれの国が、世界や自国の環境のことだけでなく、自国の政治・経済・安全保障の将来を考慮に入れて行動しなければならないという現実からは逃れられないので、やはり何かと摩擦はありますが、なんとか少しずつでも前進できることを期待したいですね。
さて、気候変動イニシアティブが先月開催した「気候変動アクション日本サミット2024」の映像と資料が公開されているのでご案内します。
名称: 「気候変動アクション日本サミット2024」
開催日: 2024年10月18日
主催: 気候変動イニシアティブ(Japan Climate Initiative; JCI)
主な内容:下記HPより抜粋
【開会あいさつ】
末吉 竹二郎 気候変動イニシアティブ 共同代表
【ビデオメッセージ】
・ニガール・アルパダライ 国連COP29気候変動ハイレベルチャンピオン
・ジョン・ポデスタ 米国大統領上級顧問(国際気候政策担当)
【基調講演】
セルウィン・ハート 国連事務総長特別顧問(気候行動および公正な移行担当)
【来賓あいさつ】
ジャン=エリック・パケ 駐日欧州連合(EU)大使
【パネルディスカッション】「気候変動アクション最前線2024」
○ セッション1
「日本の気候変動政策を変える|JCIメッセージの実現に向けて」
COP28 や G7 サミットでの合意を実現し、1.5℃目標に整合する道筋に乗るため、日本の気候変動政策はどうあるべきかを議論する。
・オリー・ウィルソン クライメート・グループ RE100・エネルギー事業責任者
・楠本 正治 パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社 品質・環境本部 本部長
・芹ヶ野 瑠奈 日本若者協議会 キャンペーナー
・引間 雅史 上智大学特任教授、学長特別顧問
学校法人上智学院理事(経営企画・資産運用・情報システム・IR担当)
モデレーター:国谷 裕子 ジャーナリスト
○ セッション2
「再生可能エネルギー容量3倍を実現する」
脱炭素の鍵の中心となる再エネ。再エネ容量 3 倍の国際合意を日本でどのように実現するか。各地で進む先進例に学びながら、導入加速化のために何が必要かを議論する。
・イエンス・ボグステッド・オーフェルト RWE Renewables Japan合同会社
洋上風力発電開発アジア・太平洋地域総代表
・小山 貴史 エコワークス株式会社 代表取締役社長
・小山田 大和 合同会社 小田原かなごてファーム 社長
・豊田 祐介 デジタルグリッド株式会社 代表取締役社長
モデレーター:高瀬 香絵 自然エネルギー財団 シニアマネージャー(気候変動)
○ セッション3
「高まる非政府アクターの力を結集する」
国際的な調査において、気候変動への理解や関心が低い人の割合が突出して高い日本。気候変動への理解と行動を促進し、政策への関心を高め、脱炭素社会に向けた機運を
どのように醸成していけばよいか、様々な分野の視点から議論する。
・井田 寛子 気象予報士・キャスター
・江守 正多 東京大学 未来ビジョン研究センター 副センター長
・辻井 隆行 公益社団法人 日本プロサッカーリーグ 執行役員 サステナビリティ領域担当
・横田 啓 一般社団法人みどりのドクターズ 岡山協立病院総合診療科
モデレーター:松川 恵美 CDP Worldwide-Japan ジャパン・マーケット リード
Call To Action / 閉会あいさつ
加藤 茂夫 気候変動イニシアティブ 共同代表
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