天地創造の頃から生きてます

温暖化の影響でサンゴが白化しています。サンゴは、クラゲやイソギンチャクと同じ刺胞動物。なかでも造礁性サンゴと呼ばれるものは体内に「褐虫藻」という藻類が共生しており、褐虫藻が光合成で作るエネルギーをもらって生きているのですが、この共生関係が意外と脆いんですね。海水温が適温から1度2度上昇しただけでサンゴが褐虫藻を排出してしまうこともあるそうです。サンゴが見せる豊かな色彩は褐虫藻の色であるため、褐虫藻を排出してしまうとサンゴの白い骨格が見えるようになってしまうというわけです。

最近の記事を拾ってみました。

「サンゴの大量白化が世界で発生、最南端の世界遺産にも、一目瞭然」(ナショナルジオグラフィック/2024年7月9日)
「奄美大島でサンゴ白化」(奄美新聞社/2024年8月4日)
「石西礁湖で大規模なサンゴの白化 死んだ個体も 環境庁調査」(NHK/2024年9月5日)
「ことしもサンゴの「白化現象」確認 東海大学が沼津市で」(NHK/2024年10月1日)

一方で、東京湾がサンゴだらけになっているという報道もあります。

【東京湾の“いま”を撮影】サンゴ群落は温暖化影響で急拡大…種類や「海の森」にも変化(日本テレビ/2024年8月17日)

サンゴが増えている一方で、海洋生物の餌になったりすみかとなったりする「海の森」と呼ばれる海藻(カジメ)が姿を消している様子が映っています。水温上昇によって新たにやってきた魚たちがカジメを食べ尽くしているためだそうです。

地上ばかり見ているとなかなか気がつきませんが、水中の世界も激しく変化しているんですね。

ところで最近、ちょっと面白い発見がありました。10月25日に琉球大学の発表があり、なんと7,000年以上も生きているサンゴの群体が深海で発見されたそうです。

琉球大学:世界最長寿級の深海生物を発見 〜太平洋の海山(水深525m)で7000年以上生きるサンゴ群体〜(2024年10月25日)

7,000年前ですよ、7,000年前。昔、東ローマ帝国が使用していた「世界創造紀元」という暦があります。旧約聖書で描かれている「天地創造」が起こった年を元年とする暦ですが、この元年はいまの西暦でいうところの紀元前5509年です。つまりこのサンゴはユダヤ教・キリスト教的に言うと、天地が創造されたころからずっと生きているということになります。発表にも、世界最長寿級の生物であると書かれていますが、いやほんとに気が遠くなるような年月を暗黒の深海525mで生き抜いていらっしゃるわけで、この写真に映ったサンゴに深い敬意を覚えました。こうしたご長寿サンゴがこれからも生き続けていられる海にしていきたいものですね。

さて、JT生命誌研究館の主催でサンゴについてのレクチャーが開催されるので、ご案内します。

名称: 生命誌レクチャー「科学でサンゴ礁生態系を保全できるのか?」
日時: 2024年11月16日(土)15:00〜16:00 
会場: オンライン 
主催: JT生命誌研究館
参加費: 無料 

主な内容:下記HPより抜粋 

講演「科学でサンゴ礁生態系を保全できるのか?」
大久保 奈弥 東京経済大学教授

サンゴ礁は海洋で最も生物多様性の高い場所のひとつとして知られ、人間にも数多くの恩恵を与えています。しかし、特に沖縄では日本復帰後から経済活動によりサンゴ礁が破壊され、また近年では気候変動による高水温でサンゴが大規模に死滅する状況にあります。そのような中、科学技術でサンゴ礁生態系を守ると謳う取り組みが行われるようになりました。果たしてそれは可能なのでしょうか。サンゴの生態・生理を研究してきた気鋭の研究者とともに考えます。

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