気候変動と健康リスク

平安時代末期の1181年、平清盛は熱病にかかり高熱に苦しんで亡くなったそうです。その様子は「平家物語」にも描かれており、井戸水を汲んで石の湯船にいれたところに清盛が入ると、水が沸き上がって湯になった、とか、水をかけると石か鉄などが焼けたように水がほとばしって寄り付かなかった、などとされています。とんでもない高熱だったようです。

この熱病は一体何だったのか。いくつか説がありますが、そのうちの一つがマラリアです。マラリアは熱帯・亜熱帯地域の感染症で、2021年には2億4,700万人が感染し、61万9,000人が死亡しています。

昔、日本にもありました。古代日本で「おこり」とか「かわらやみ」という名で呼ばれていた病気がありますが、これが明治になって欧米に倣ってマラリアと呼ばれるようになりました。1903年には全国で年間20万人の患者がいたそうで、1916年内務省衛生局の「各地方に於けるマラリアに関する概況」によると、北海道でも2千人の患者がいたそうです。北海道でマラリアなんて、今からでは想像ができませんね。

その後、治療薬・蚊帳・蚊取り線香の普及、湿地改良・殺虫剤散布などによって媒介蚊が減少し、1959年の感染例が最後となって、日本でのマラリアは消滅しました。

マラリアの感染地域の条件としては気温だけでなく、生活環境や殺虫剤などの社会的な条件も関係しているので、気温が上昇したからといってすぐに感染地域の拡大に繋がるわけではありませんが、それでもやはり温暖化が進むとそうした懸念も持ち上がってきます。

10月9日、EUの「コペルニクス気候変動サービス」が、今年の世界の平均気温が過去最高になるという見通しを発表しました。また、2024年9月の気温は産業革命前比で1.54℃高く、産業革命前比で1.5℃を超えて高い状態が2023年7月以降14ヶ月連続で続いているそうです。

気候変動によって、どんな健康リスクが生じてくるのでしょうか。
そんなことがテーマのシンポジウムが開催されるので、ご案内します。

名称: 第59回 北海道医学会市民公開シンポジウム「気候危機とその健康リスクにどう立ち向かう? ~熱中症や気候変動関連の健康被害を防ぐために~」
日時: 2024年10月26日(土)13:00~15:00 
会場: 北海道大学医学部百年記念会館/オンライン 
主催: 北海道医学会
参加費: 無料 

主な内容:下記HPより抜粋 

・趣旨説明:上田佳代(北海道大学大学院医学研究院 教授)

「気候変動と医療」
橋爪真弘(東京大学大学院医学研究科 教授)

「近年の豪雨災害の特徴と気候変動予測を踏まえた水分野におけるリスクベースの取り組み」
山田朋人(北海道大学大学院工学研究院 教授)

「カーボンニュートラル社会における保健医療」
南齋規介(国立環境研究 領域長)

「北海道の死因救命における熱中症事例について」
的場光太郎(北海道大学大学院医学研究院 教授)

「介護施設における熱中症対策 ~北海道・千葉県での実態把握調査から~」
新井明日奈(北海道大学大学院医学研究院 助教)

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