「ヤバい鉱物」でもいいか

言葉には流行り廃りがありますが、人それぞれの感性ですから、なかなか馴染めない言葉もあります。以前は、危険な状況を指して「ヤバい」と言っていましたが、今では「最高」「素敵」「かわいい」「うまい」など、もっと広い意味でも使われています。「駅前に最近できたあの店、かなりヤバいよ?」と聞いただけでは、そこに行くと予想外の危険が待っているのか、最高にうまい料理が食べられるのか、まったく分かりません。

最近、「クリティカルミネラル」という言葉を聞きます。EV用バッテリーや太陽光パネルなどの再エネ設備に必要なために、近年急速に需要が高まっている鉱物全般を指しています。何がクリティカルミネラルにあたるのか、はっきりした定義はないようで、国によっても、時の流れによっても違うようです。一例としてアメリカの地質調査所(USGS)のリスト(2022年)をみると、アルミニウム、イリジウム、リチウム、チタニウムなど、50種類もありますが、これは最初に作成された2018年のリストに15種類が加わったものです。4年の間にその重要性が高まったんですね。

USGS: The United States Geological Survey has released a new list of 50 mineral commodities critical to the U.S. economy and national security after an extensive multi-agency assessment. 
(米国地質調査所は、複数の機関による広範な評価を経て、米国経済と国家安全保障にとって極めて重要な50種の鉱物資源の新たなリストを発表した)

英語のクリティカル(critical)というのは、「非常に重要な」という意味がありますが、「危機的な」「重大な」という意味もあります。脱炭素化社会における需要から見た重要性、それ故に生じる地政学的な緊張、それらの採掘・精製が孕む環境破壊や労働・人権問題の可能性。「重要」という枠に収まりきらない要素がいろいろありますから、クリティカルという言葉の語感がぴったりあてはまる気がします。

そう考えると、これを日本語に言いなおす時、「重要鉱物」ではどうにも物足りません。ここは現代の若者の知恵を拝借して「ヤバい鉱物」と呼ぶのが、個人的にはなんだか一番しっくりきますが、いかがでしょうか。いや、「ちょっとヤバい奴」だと思われるかもしれませんね。

さて、そんなクリティカルミネラルについての講演が開催されるので、ご案内します。

名称: 気候変動の本当の怖さ、迫られる企業対応とは
    〜クリティカルミネラル獲得に大きな影響〜

日時: 2024年6月10日(月)13:30〜17:20 
会場: 赤坂インターシティコンファレンス 
主催: 日経ビジネス、日経ESG
参加費: 無料 

主な内容:下記HPより抜粋 

○開会のご挨拶・講演
「THE END OF THE BEGINNING」
Lou Munden 氏 合同会社TMP Climate, TMP Public C.I.C. Founder

○基調講演
「気候危機の「そもそもの話」をしよう」
江守 正多 氏 東京大学 未来ビジョン研究センター・教授

○テーマセッション:クリティカルミネラル
「クリティカルミネラルの予想される未来の姿」
気候変動とクリティカルミネラル、特にトランジションミネラルの関連性について
Justin Muhl 氏 TMP Public C.I.C. アナリスト

○パネルディスカッション
「クリティカルミネラル 日本企業対応の現在」
本郷 尚 氏 三井物産戦略研究所 シニア研究フェロー
原田 武 氏 独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構 金属企画部担当審議役・調査課課長

○モデレーター
松井 健 日経ビジネス発行人

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