深夜のフィーバーに幸あれ

早朝、「チュンチュン、チュンチュン」とか「ホーホケキョ」といった鳥の声で目覚められたら、爽やかな気持ちで1日が始められますよね。

鳥は朝鳴くことが多い印象があるので、夜に鳴くのはフクロウくらいかと思っていたら、夜中に大フィーバーする鳥がいるそうです。これは3月に北海道大学が発表した研究で、グリーンランドのシオラパルクにいるヒメウミスズメ(英名:little auks, 学名:Alle alle)の行動を調べたところ、深夜に最も活発に鳴くことが分かり、しかも白夜の環境下でも概日リズムに沿った生活を送っていることが分かりました。

北海道大学:深夜の時間帯にフィーバーする北極域の海鳥繁殖地

これだけでも面白いのですが、このヒメウミスズメの別の側面がまた面白いです。この地域は毎夏6,000万羽がやってくるヒメウミスズメ最大の繁殖地です。彼らは海に潜ってオキアミや小魚などを食べ、繁殖地周辺には膨大な量のフンを落とします。それが肥料になり、繁殖地とその周辺では植物が育ちます。つまり彼らは生活しながらいつの間にか栄養分を海から陸に運ぶ役割を果たしているわけです。この植物群の存在がウサギ、ガチョウ、キツネ、トナカイ、ジャコウウシなどの野生動物たちを支えます。全長20cmほどの小さな鳥ですが、生態系における重要性は非常に大きいと言われています。

また、何千年も前からヒメウミスズメはイヌイットの人々に食されており、タモ網ひとつで、ぱっと見にはなんだか昆虫採集をするような感じで、捕まえることができます。ほかの動物の狩りは男性の仕事ですが、これは老若男女、誰もが行える狩りなんです。

捕獲の瞬間の写真を見た時、「え、こんな調子で獲れちゃうの!?」と思いました。
Greenlandtoday: The little auk harvest of Thule

ヒメウミスズメは、アザラシの中に詰め込んで発酵させて作る「キビヤック」という伝統食品の材料でもあります。

環境と生き物の関わり、それを背景に営まれてきた人間の暮らしや文化が垣間見えて、興味深いですよね。これからもこの極北の地で深夜のフィーバーが続くといいなと思います。

さて、「生物/文化の多様性と景観」というテーマで3日に分けて行われるセミナーがありますので、ご案内します。

名称: 「景観セミナー/レクチャーシリーズ2024(前期)」
     テーマ:生物/文化の多様性と景観

日時: 2024年6月7日(金)、7月5日(金)、7月19日(金)18:00〜19:30 
会場: 九州産業大学景観研究センター/オンライン 
主催: 九州産業大学
参加費: 無料 

主な内容:下記HPより抜粋 

[1]「野の草花と文化的景観」
 内田 泰三 氏
 (本学建築都市工学部教授)
 日時:6月7日(金)18時00分〜19時30分

[2]「海岸風景の継承:生態系保全とコミュニティの形成」
  松島 肇 氏
 (北海道大学大学院 農学研究院 講師)
 日時:7月5日(金)18時00分〜19時30分

[3]「水といきものと文化的景観」
 深町 加津枝 氏
 (京都大学大学院 地球環境学堂 准教授)
 日時:7月19日(金)18時00分〜19時30分

詳しくはこちらをご覧ください。