西アフリカのマリ共和国。この地域には13世紀から17世紀にかけて栄えたマリ帝国という王国がありました。金や塩、銅、綿などの交易で大いに繁栄し、14世紀中頃に栄華を極めます。
1324年、マンサ・ムーサ王がメッカ巡礼を行った際には家臣6万人、奴隷1万2千人以上を連れて、なんと10トン以上の黄金を持っていきました。このインパクトはとてつもなく、彼が途中で立ち寄ったカイロで大量の黄金をばらまいたために金相場が暴落し、10年以上インフレーションが続いたとの記録があるほどです。
時は流れて1987年、マリの首都バマコの北60kmにあるブラケブグ村で井戸が掘られていた時のことです。まだ水は出ていませんでしたが、何かの無臭ガスが出ていました。それを知らない作業者の1人がタバコを咥えながら穴を覗き込んだところ、ガスに引火して爆発。顔に大火傷を負いました。その後数日間も炎が上がり続けました。危険なため、その穴はアスファルトで塞がれてしまいましたが、25年後の2012年に調査が行われ、そこで発生しているガスは水素98%、窒素1%、メタン1%だと判明しました。現在この水素は発電に使われ、村の電力を賄っています。
このように自然に生成された水素は、”ホワイト水素”と呼ばれており、世界各地の地中に大量に埋蔵されていることが分かってきました。米国地質調査所(USGS)の調べでは地球上に約5兆トンが存在し、そのうちわずか数%でも採掘できれば、世界の水素需要の200年分になる可能性があるそうです。
天然に産出する水素ですから、環境に良いだけでなく、人工的に作り出す水素に比べて費用も小さくなります。
現在アメリカ、カナダ、オーストラリア、フランス、スペイン、コロンビア、韓国などが探査を行っていて、ホワイト水素の”ゴールドラッシュ”とも言える状況が起きています。
かつて黄金で栄えたマリ。そこで発見された天然の水素が、水素のゴールドラッシュのきっかけとなったなんて、なんだか面白いですね。
さて、信州大学などの主催で水素に関するシンポジウムが行われますのでご案内します。
名称: 公開シンポジウム「南信州におけるグリーン水素と水循環技術の展開」
日時: 2024年6月1日(土)13:30~16:30
会場: 産業振興と人材育成の拠点「エス・バード」(長野県飯田市)/オンライン
主催: 南信州広域連合、飯田市、信州大学
参加費: 無料
主な内容:下記HPより抜粋
【開会・あいさつ】
・佐藤 健 南信州広域連合長/飯田市長
・中村 宗一郎 信州大学長
【セッション1】
「アースポジティブを目指す信州大学アクア・リジェネレーション機構の取り組み」
手嶋 勝弥 信州大学アクア・リジェネレーション機構長
【セッション2】「極超低圧高透水逆浸透膜
~地域、世界における水ソリューションと新産業創出への展開~」
遠藤 守信 信州大学特別栄誉教授
【セッション3】「太陽光と水から創るグリーンな水素エネルギー製造の実証研究」
堂免 一成 信州大学先鋭領域融合研究群 先鋭材料研究所 特別特任教授
【セッション4】
「化学品や燃料のカーボンニュートラル化に向けたグリーン水素の役割、使い方」
瀬戸山 亨 三菱ケミカル株式会社 エグゼクティブフェロー
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