3月22日は国連が定めた「世界水の日」(World Water Day)です。1993年以来、水の重要性はもちろんのこと、水質汚染や水不足、衛生管理、気候変動の影響など、水をめぐるさまざまな課題について考え、行動する日とされています。
毎年、この日に合わせて国連世界水開発報告書(The United Nations World Water Day Report)が公表されており、2024年版はこちらから見ることができます。
The United Nations World Water Day Report 2024
https://www.unwater.org/publications/un-world-water-development-report-2024
今年の報告書のテーマは「繁栄と平和のための水」となっていますが、このページの紹介文からざっくりと要点を抜き出してみます。
「繁栄と平和のための水」
・安全な飲料水と衛生設備は、人権である。これらなしには、尊厳があって安定的で健全な生活を送れない。
・水は、持続可能な方法で公平に管理されれば、平和と繁栄の源となり得る。
・水は、地域社会の安定と平和構築を促進し、移住管理と災害リスクの軽減に貢献できる。
・水不足や水質汚染があったり、水の入手が困難になったりすると、食糧安全保障が損なわれ、
生計が失われ、紛争が発生する可能性がある。
・安全保障上の脅威が増大する不安定な世界では、私たち全員が認識すべきである。すべての人に対して、水を得られるようにし、水と衛生設備の持続可能な管理を行うことが、世界の繁栄と平和にとって不可欠であることを。
蛇口をひねればいつでもきれいな水が出てくる生活をしているとついつい忘れがちになってしまいますが、水が生命の基盤であり、平和な社会の基盤である、ということがよく分かりますね。
こんな世界水の日に、もうひとつ重要な発表がありました。
「水のノーベル賞」とも呼ばれる「ストックホルム水大賞」に東京大学大学院工学系研究科の沖大幹教授が選ばれました。世界の水収支、仮想水の世界的な流れ、再生可能な水資源量の時間的・空間的変動に関する顕著な貢献が高く評価されました。沖氏が構築した世界主要河川の流量を正確に示すデジタル地図(Total Runoff Integrating Pathways, TRIP)は世界で最も広く利用されているそうです。
東京大学:沖 大幹 教授が「ストックホルム水大賞」を受賞
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/articles/z0104_01382.html
仮想水、あるいはバーチャルウォーターという言葉は、あまり聞きなれない言葉ですが、これはある食料を輸入している国がもしその輸入食料を自国生産すると仮定した場合に必要になる水の推定量です。環境省によると、例えば1kgのトウモロコシの生産には1,800リットルの水が必要。そうした穀物を食べて育つ牛の肉1kgを生産するためにはその2万倍の水が必要。食料を輸入する国は、自国でこうした水を使わなくて済みます。つまり、食料を輸入しているということは、形を変えて水を輸入している、と考えることができるわけです。なるほど、面白いですよね。1993年にこの革新的な概念を提唱したロンドン大学のジョン・アントニー・アラン教授は、2008年にストックホルム水大賞を受賞しています。
実にさまざまな研究が行われているんだな、と改めて知りました。
さて、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書に関連したイベントが開催されますので、ご案内します。
名称: IPCC報告書オンラインイベント
「専門家と考える、気候変動と生物多様性の未来~対策の両立に向けて」
日時: 2024年4月19日(金)13:30~15:00
会場: オンライン
主催: 国立環境研究所
参加費: 無料
主な内容:下記HPより抜粋
・背景説明「気候変動と生物多様性の絡み合い」 山野博哉
・解説資料「気候変動と生物多様性にまたがる知見の整理」の紹介 日比野剛
・専門家からの話題提供
(1)気候変動対策・生物多様性保全のためのファイナンス 森田香菜子
(2)植林・バイオマス利用がもたらすシナジー・トレードオフ 長谷川知子
(3)気候変動と生物多様性の問題同時解決に向けた食分野の重要性 土屋一彬
・参加者からの質問やコメントをもとに、ディスカッション
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