旧約聖書に、ヨシュアという人物が登場します。モーセの後を継ぎ、古代イスラエルの人々の指導者となり、約束の地カナーンを攻略しました。
このヨシュアに因んで名付けられた、「ジョシュア・ツリー」(Joshua tree)という木がアメリカ西部のモハーヴェ砂漠の標高400-1800mに生息しています。19世紀中頃にこの地にたどり着いたモルモン教徒の開拓民たちがそう名付けたとも言われています。その姿は、怪獣のキングギドラが何頭もくっついたような凄みのあるものですが、開花は特定の気象条件が揃わないと起こらず、ユッカガというガによる受粉に依存している、なかなかデリケートな木です。
また、カリフォルニア州のサンホアキン・バレーには、「サンホアキン・キットギツネ」(San Joaquin Kit Fox)という小型のキツネが生息しています。砂漠の生息地に適応しているようで、大きい耳が熱の放散に役立ち、暑い砂漠でも涼しく過ごせるそうです。しかし絶滅危惧種に指定されており、農地、都市、インフラ施設、太陽光発電施設などの拡大によって生息地が減少していますし、コヨーテやアカギツネなどによる捕食圧力も受けています。
3月8日、Nature Climate Change 誌にカリフォルニア大学デービス校の研究が掲載されました。気候変動と戦うためには再生可能エネルギーの活用が必要である。しかし、再生可能エネルギー施設が拡大するにつれて、生物多様性のホットスポットと重なることに注意しなければならない、と警告しています。
2070年までに、気候変動の影響で、ヨシュア・ツリーはその生息域の31%を、サンホアキン・キットギツネは81%を失うと推測されています。ところがこれに、既存および計画中の再生可能エネルギープロジェクトを重ね合わせて計算すると、ヨシュア・ツリーで1.7%、サンホアキン・キットギツネでは3.9%さらに生息地を失う可能性があるそうです。
再生可能エネルギーで地球環境を良くしても、生物多様性が損なわれてしまっては、何のためのエネルギー改革なのか、分からなくなってしまいます。脱炭素化と生物多様性の保全が衝突しないように、気をつけていきたいものですね。
ネイチャーポジティブについてのウェビナーが開催されるので、ご案内します。
名称: 自然共生ウェビナー 企業価値を高める「ネイチャーポジティブ」とは?
~「30by30」実現に向けた企業の森づくり~
日時: 2024年3月25日(月)13:00~14:20
会場: オンライン
主催: 朝日新聞社、公益財団法人森林文化協会
参加費: 無料
主な内容:下記HPより抜粋
1.基調講演
「『30by30』『ネイチャーポジティブ』の意義」
小林 誠 氏 (環境省自然環境計画課 課長補佐)
2.プレゼンテーション
「企業が取り組む『自然共生サイト』とは?事例紹介と環境経営の現在地」
三輪 隆 氏 (竹中工務店技術研究所 リサーチフェロー)
永田 稔 氏 (朝日新聞社 経営企画・メディア戦略担当補佐役)
3.パネルディスカッション
「企業の森づくりと環境経営」
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