経済活動がゆるんでも熱くなるのか 地球

気候の仕組みとは、ほんとうに複雑だな…。改めてそんなことを思わされる研究発表がありました。海洋研究開発機構(JAMSTEC)や名古屋大学の研究チームが今年7月に発表したものです。

JAMSTEC: ロックダウンによる人為起源エアロゾル減少が気候に与える影響を全球規模で解明 
ー衛星観測に基づく原料物質の排出量変化から現実的な評価を可能に-

コロナ禍で世界の国々においてロックダウンが行われたため、その期間中は経済活動が低下し、CO2の排出量の減少による冷却効果がありました。

その一方で、経済活動の低下に伴い、大気中で生成される人為的なエアロゾルの量も減りました。エアロゾルには、太陽光を散乱することで地上に達する熱エネルギーを減少させ、地球を冷却させる「日傘効果」がありますが、ロックダウン期において人為的エアロゾル量が東アジア・北米・欧州で平均8~21%減少しました。

人為的エアロゾルが減ったことが、気候にどんな影響を与えたのか。それを初めて地球規模で評価したのがこの研究です。

CO2排出量の減少による「冷却」効果はあるものの、エアロゾル量の減少による「昇温」効果によってそれが打ち消されていることが分かりました。経済活動が停滞したのに、結果としては地球に入る熱エネルギーは増加していると推定されるのだそうです。

研究チームは今後の展望として、上記のプレスリリースから引用すると「このことは逆説的に、今後の気候安定化のためには、エアロゾル量の削減が引き起こす昇温を打ち消すほどの、さらなるCO2排出削減努力が必要になることを示唆しています」としています。

まったく、人間の活動と気候変動の関係というのは、ややこしいものですね。

さて、この研究に関わった関谷高志氏(JAMSTEC)も登壇するシンポジウムが開催されるので、ご案内します。

名称: 気候変動予測先端研究プログラム令和5年度公開シンポジウム
    「教科書では分からない気候変動 ~最近の異常気象から長期対策の必要性まで~」

日時: 2023年12月25日13:00~15:50 
会場: オンライン 
主催: 文部科学省気候変動予測先端研究プログラム
参加費: 無料 

主な内容:下記HPより抜粋 

最先端の気候変動研究に携わる研究者から、気候変動予測の方法やメタンの温暖化への影響などについて、最新の研究内容を交えて分かりやすくお伝えします。ファシリテーターに世界自然保護基金(WWF)ジャパンの小西様をお招きし、ディスカッションを行うTalk Timeも企画しております。

〇研究者4名による講演+Q&A
小坂 優 先端科学技術研究センター(東京大学)
高須賀 大輔 大気海洋研究所(東京大学)
関谷 高志 JAMSTEC
横畠 徳太 国立環境研究所

詳しくはこちらをご覧ください。