人工知能の能力が人間を超えてしまう技術的特異点(シンギュラリティ)が2045年よりも前にやってくる。そんな話を聞くようになりました。そんなことが起こりうるのか。そんなことが起こって良いのか。いろいろ議論がありますが、それよりちょっと気になることがあります。
60年以上前に心理学者ジョージ・ミラーが、人間の短期記憶の容量は7±2個であると唱えました。いわゆる’マジカルナンバー・セブン’という考え方です。しかし20年ほど前になって、別の心理学者ネルソン・コーワンが、いや、短期記憶の本当の容量は4±1である、と唱えました。’マジカルナンバー・フォー’です。どういうことなのでしょうか。この調子で行くと、20年後には、「最近の研究で、短期記憶の容量は2±1だと分かりました。でもご安心を。当社の汎用人工知能に脳を接続すれば・・・」なんてことになるのでしょうか。気になります。
ところで、気候変動についてFuture Earthなどが共同制作している報告書「気候変動について今伝えたい、10の重要なメッセージ」(10NICS, “10 New Insights in Climate Science”)の2023年版が、ドバイ(UAE)で行われているCOP28に合わせて公表されました。
10 New Insights in Climate Science 2023/2024
https://10insightsclimate.science/#explore
10個は多い。短期記憶の限界を超えています。しかし多面的な危機的状況を踏まえての重要なメッセージですから、ごく端的にポイントを書いてみます。
(1) 「最小化」1.5°C越えの程度と期間の最小化・最短化が重要。
(2) 「廃止」化石燃料の急速で段階的な廃止が必要。
(3) 「政策」効果ある二酸化炭素除去のためには、強固な政策が不可欠。
(4) 「依存リスク」自然界の炭素吸収源への過度の依存はリスク。
(5) 「共同統治」気候と生物の緊急事態に対処するには、共同統治が必要。
(6) 「複合事象」複合事象が気候リスクとその不確実性を増大させる。
(7) 「消失加速」山岳氷河の消失が加速している。
(8) 「移動困難」気候リスク下に住む人々の移動は、困難になっている。
(9) 「公正性」公正性が、効果的な気候適応を可能にする。
(10) 「食料改革」食料システムの改革は、公正な気候変動対策に貢献する。
これら10の重要なメッセージなどについて正しく理解するため、Future Earthなどが開催するイベントがありますので、ご案内します。
名称: 気候変動について今伝えたい、10の重要なメッセージ」
~10 NEW INSIGHTS IN CLIMATE SCIENCE~
日時: 2023年12月13日(水)14:00~15:30
会場: オンライン
主催: Future Earth国際事務局日本ハブ、 長崎大学、国立環境研究所
参加費: 無料
主な内容:下記HPより抜粋
・オープニング Future Earth国際事務局日本ハブ/長崎大学 春日 文子氏
・2023政策報告書紹介 Future Earth国際事務局日本ハブ/長崎大学 昔 宣希氏
・10NICS及び2023政策報告書について紹介
Insight 1: 国立環境研究所・田中 克政氏
Insight 2: 京都大学・Gregory Patrick Trencher氏
Insight 3: 長崎大学・ 近藤 智恵子氏
Insight 4: 海洋研究開発機構/総合地球環境学研究所・Prabir K Patra氏
Insight 5: 地球環境戦略研究機関(IGES)・藤崎 泰治氏
Insight 6: 国立環境研究所・塩竈 秀夫氏
Insight 7: 北海道大学・杉山 慎氏
Insight 8: 国立環境研究所・高橋 潔氏
Insight 9 : Future Earth国際事務局日本ハブ/国立環境研究所・Giles B. Sioen氏
Insight 10: University of Twente・Steven McGreevy 氏
・閉会挨拶 Future Earth国際事務局日本ハブ/総合地球環境学研究所 Ria Lambino氏
詳しくはこちらをご覧ください。
・去年発表された2022年版の和訳については、去る4月に行われた公開イベントの動画、
資料などがこちらで確認できます。