ナイル川と聞くと古代エジプト文明を連想しますが、ナイル川はエジプトだけのものではありません。上流に向かってさかのぼっていくと、スーダンを通って、支川のひとつはエチオピアにたどり着きます。そこにはアフリカ最大規模の水力発電所を擁する大エチオピア・ルネサンスダム(Grand Ethiopian Renaissance Dam, GERD)があり、その発電量は645万kwを誇ります。日本最大の発電規模を持つのが奥多々良木発電所(兵庫県)で、193万kwですから、
実にその3倍以上になります。エチオピアの今後の経済発展には欠かせない電力供給源です。
しかし、エジプトは必要な淡水の90% 以上をナイル川に頼っているため、このダムが農業・工業・市民生活など広範囲のエジプト経済に壊滅的な打撃を与えると訴えており、スーダンも同様に水量減少による悪影響やダムの安全性に懸念を表明しています。
増え続ける人口を支えて経済を発展させていくためには、十分な電力と水の確保は最も重要なことですよね。しかしこのダムの建設や運営をめぐって、3国間での調整はなかなかうまく行っていません。
世界人口が80億人を超える一方で、水をめぐるこうした対立問題は地球規模でさらに激化していくことが予想されます。強制移住、気候変動、紛争、健康、貧困、食糧安全保障など、様々な側面に影響を及ぼします。
今年3月22日から24日まで、ニューヨーク国連本部にて国連水会議(2023 UN Water Conference)が開催されました。あまり聞いたことのない会議ですが、それもそのはず。前回は1977年にアルゼンチンのマルデルプラタで開催されたので、ほぼ半世紀前のことなのです。
半世紀ぶりに開催される会議。それほど事態は深刻だということなのですね。
会議のなかで国連経済社会問題担当事務次長の李軍華(リ・ジュンファ)氏は「水の未来だけでなく、世界の未来に変化をもたらすため、国際社会が決意を持って2023年国連水会議に結集しました」と述べました。危機感が伝わってきます。
さて、この半世紀ぶりの会議の開催を記念したシンポジウムが開催されますので、ご案内します。
名称: 2023年国連水会議開催記念シンポジウム
日時: 2023年6月12日(月)14:00~17:00
会場: 国連大学エリザベス・ローズ国際会議場(東京都渋谷区)/オンライン
主催: 国際連合地域開発センター(UNCRD)
参加費: 無料
主な内容: 下記HPより抜粋(*日英の同時通訳があります。)
【開会】
・李軍華(リ・ジュンファ、 Li Junhua) 国際連合経済社会問題担当事務次長
・ペーター・ファン・デル・フリート 駐日オランダ王国大使
・原圭一 外務省大臣官房審議官
・根本かおる 国際連合広報センター所長
【2023 年国連水会議での議論と成果について 】
・全体概要
横田妙子 国際連合地域開発センター 災害リスク軽減と水に関するプログラム専門家
・「水行動アジェンダ」と今後のフォローアップ
ニルス・フランデレン オランダインフラ水管理省 国際水問題コーディネーター(予定)
・インタラクティブ対話3「気候、レジリエンス(強靭性)、環境のための水」
上川陽子 2023 年国連水会議日本国総理特使・衆議院議員(予定)
・自治体のショーケース大西一史 熊本市長
・熊本水イニシアティブ
時岡利和 国土交通省水管理・国土保全局 国際河川技術調整官
【パネルディスカッション】
「水とローカル SDGs ― 持続可能な都市の実現に向けて」安全な水やトイレへのアクセス、水関連災害、気候変動をはじめとする地球規模課題等、現在直面する様々な水問題を取り上げ、それらの解決策として地方自治体や地域レベルでの活動(事前防災、スマートシティプロジェクト等)を中心に、政府、地方自治体、国連機関、市民団体、企業の代表などがそれぞれの活動を紹介し、今後の展望について議論する。
・モデレーター
-廣木謙三 政策研究大学院大学教授・水と災害に関するハイレベルパネルコーディネーター
・パネリスト
-沖理子 宇宙航空研究開発機構地球観測センター長
-加藤篤 NPO 法人日本トイレ研究所代表理事
-古澤礼太 中部大学准教授、中部 ESD 拠点事務局長
-山田朋人 北海道大学大学院工学研究院教授
-他、国際機関、政府、企業の代表等
【2023 年国連水会議から第 10 回世界水フォーラムへ】
・インドネシア公共事業・住宅省または在日インドネシア大使館(予定)
【閉会挨拶】
・遠藤和重 国際連合地域開発センター所長
詳しくはこちらをご覧ください。