炭素国境調整措置(CBAM)について知る

関税には、国家の財源という側面と、国内産業の保護手段という側面があります。幕末に欧米列強と数々の条約を結ぶ中で関税自主権を失った日本が、やっとのことでそれを完全に取り戻したのは、1911年の日米通商航海条約の締結においてでした。これは明治44年のことなので、実に40年以上にわたって関税自主権がなかったことになります。

戦後、日本の自動車産業が急速に発展した背景には、外国車に対する輸入規制や高率の関税で自動車産業を保護してきたことがあります。しかし1965年には35%~40%だった乗用車に対する関税も、段階的に引き下げられて、1978年には0%になりました。この頃には十分な競争力がついていたのですね。

2018年からアメリカと中国との間の貿易摩擦が顕在化し、両国が関税の引き上げ合戦を行いました。

関税は自国経済を守るための武器とも言えますね。

昨年12月13日、EUが炭素国境調整措置(Carbon Border Adjustment Mechanism, CBAM)に合意したとの発表がありました。事実上の関税(国境炭素税)とも言われていますが、駐日欧州連合代表部のサイトによると、「CBAMは、EUに流入する炭素集約型製品の生産過程で排出される炭素に適正な価格を設定し、EU域外の国においてよりクリーンな工業生産を促進するEUの画期的な手段である」とされています。

この仕組みを使って、EU域外に対しても脱炭素化の流れを強化するということですね。素晴らしいことなのですが、これも立場によって見え方が変わってきます。

この炭素国境調整措置について理解を深められそうなセミナーが行われますので、ご案内します。

名称: 炭素国境調整: 進歩か危機か?
日時: 2023年5月15日(月)17:00~18:30
会場: オンライン
主催: 東京大学国際高等研究所東京カレッジ
参加費: 無料
主な内容: 下記HPより抜粋
 欧州連合(EU)は、炭素価格が低い国からの輸入品に課される、世界初の炭素国境調整メカニズムの導入を検討しています。賛成派は、これを気候変動との戦いにおける大きな前進だと考えています。その一方、反対派は保護主義への扉を開くものだと捉えています。その論拠と根拠はどういったものでしょうか。他の国も同様に検討を進めるべきでしょうか。

・講演:Michael KEEN(東京カレッジ潮田フェロー)
・コメント:亀山 康子(東京大学大学院 新領域創成科学研究科教授)
・Q&A
・司会:Trent BROWN(東京カレッジ准教授)

詳しくはこちらをご覧ください。