イギリス王室が口にするミルクは濃厚で美味しくなければならない。そのために改良されたのがジャージー牛。ホルスタインより体はひと回り小さいものの、そのミルクに含まれる脂肪、タンパク質、ビタミン、ミネラルは豊富で良質です。
日本に輸入されたのは1877年(明治10年)のことですが、現在このジャージー牛を最も多く飼育しているのが岡山県真庭市北部の蒜山(ひるぜん)高原。そこで生産されるミルクは「蒜山ジャージー牛乳」として知られています。
岡山県で最も広い自治体でもある真庭市は、2020年3月17日に2050年ゼロカーボンシティを目指す宣言を行いました。そして2022年4月には第1回脱炭素先行地域に選定されたことでも知られています。
蒜山高原の牛たちの糞は、「蒜山堆肥センター」に集められ、製材木材業から出されるおが屑と混ぜられて堆肥化され、放牧地・農地の土づくりに利用されています。蒜山高原で生産される高原野菜の価値向上にも役立っています。林業、酪農、農業の循環ですね。
また、真庭市が行なっているさまざまな取り組みの中に、焼却ごみの削減をめざして2015年から始めた資源循環システムの構築があります。それまでは下水道の普及率が4割ほどで、汚泥とし尿は浄化して河川に流し、生ごみは焼却して灰を埋設処理していました。しかしこの下水と生ごみからバイオ液肥を生産するプラントを建設し、市内の一部の地区で生ごみの分別収集を始め、その地区の可燃ごみを2割(約25トン)削減することに成功していました。
このバイオ液肥は、なんと無料で配布されています。
真庭市:生ごみ、し尿、浄化槽汚泥から作った「バイオ液肥」を使ってみてください
「どなたでもご利用いただけます」とのことなので、「おー、どれほどのものかちょっと試してみたいなあ」という方の要望にも答えられますね。でも、100リットル以上欲しい時は、予約が必要です。
やがてこの取り組みは市全体に広げることになり、2022年1月に新しい「生ごみ等資源化施設」の建設が始まりました。2024年度中に稼働が始まる予定です。年間の処理能力は33,000トンで、そこから液肥を8,000トン生産します。これによって可燃ごみを約40%削減し、温室効果ガスを2,113トン削減することができるそうです。
さらに、2022年11月には、生ごみを発酵させて生じるメタンガスを精製してさらにプロパンガスを加えてバイオ燃料とし、生ゴミ収集車1台に利用する実証実験を始めました。
このますます進化していく真庭市の話も含めて、廃棄物処理と脱炭素に関連したシンポジウムが行われますのでご案内します。以前、12月14日付けのニュースレターでご案内したシンポジウム(1月17日)の第2回目です。
名称: 廃棄物処理システムにおける脱炭素・省CO2対策普及促進に係るシンポジウム
令和4年度 第2回シンポジウム
日時: 2023年3月6日(月)13:30~17:00
会場: 航空会館(東京)/オンライン
主催: 環境省、(一社)廃棄物資源循環学会
参加費: 無料
主な内容:
・開会の挨拶
学会会長 大迫政浩(国立環境研究所)
司会・進行 学会副会長 秩父薫雅(㈱神鋼環境ソリューション)
「脱炭素化に向けた廃棄物施策について
工藤喜史 (環境省廃棄物適正処理推進課 総括補佐)
「地域バイオマスの利活用による清掃工場の持続可能な運用システムの実証について」
田中和之 (佐賀市環境部施設機能向上室室長)
「 バイオガスのハイブリッド精製と真庭市地域の生ごみ収集車両への利用実証について」
山口浩 (真庭広域廃棄物リサイクル事業協同組合 事務局次長)
「 地方公共団体実行計画の廃棄物分野ガイダンス案等について」
井伊 亮太(パシフィックコンサルタンツ㈱ 室長)
・パネルディスカッション:
「廃棄物分野における脱炭素化に向けた展望と課題 」
コーディネーター 酒井伸一 (京都高度技術研究所 副所長)
パネラー 工藤喜史 (環境省廃棄物適正処理推進課 総括補佐)
田中和之 (佐賀市環境部)
山口浩 (真庭広域廃棄物リサイクル事業協同組合事務局次長)
大隅省二郎(Daigasエナジー㈱シニアエキスパート)
井伊亮太 (パシフィックコンサルタント㈱)室長)
大塚 直 (早稲田大学 教授)
倉持秀敏(国立環境研究所 資源循環領域/副領域長)
・閉会の挨拶
酒井伸一(京都高度技術研究所 副所長)
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