ギリシャ神話の話です。太陽神ヘリオスの息子、パエトンが殺された時、悲しみに暮れた彼の姉妹たちはポプラの木に姿を変えてしまいました。そして、彼女たちの涙は琥珀となりました。古代ギリシャ語で琥珀はエレクトロン(electron)といい、輝く太陽を意味するそうです。
紀元前600年ごろ、ギリシャの哲学者タレスが、ある発見をします。琥珀を動物の毛皮に擦り付けると、鳥の羽根やほこりなどの小さなものを引き寄せるのです。タレスはこの現象がなぜ起こるのか解明できませんでしたが、2,000年以上が過ぎてから、これが静電気によるものだと判明します。静電気は琥珀(electron)にちなんでエレクトリック(electric)と名付けられ、ここからエレクトリシティー(electricity)つまり電気という言葉が生まれます。
場所は変わって日本。奈良周辺に点在する様々な古墳から琥珀製の勾玉などが多く出土していますが、科学的分析によってこれらの多くが岩手県久慈(くじ)地方産であることが分かっています。久慈は国内随一の琥珀(英語:アンバー)の産地ということもあり、久慈市文化会館はアンバーホールと名付けられています。
久慈市は2019年12月に「2050年二酸化炭素排出量実質ゼロ」を宣言しました。
昨年11月には宮古市とともに岩手県で初めて脱炭素先行地域(第2回)に選定されました。その取り組みについて概要から簡単に抜粋します。
「過疎地域を未来に向けて発展させる脱炭素先行地域の提案」
・過疎地域の全需要家を対象に、オンサイトPPA事業等により太陽光発電・蓄電池を最大限導入。
・市有地等へのオフサイト太陽光発電の導入
・市内に設置予定の大規模陸上風力発電のうち1基を地産地消用として活用。
・バーク(樹皮)を活用した木質バイオマス熱電併給システムの導入。
概要:第2回 脱炭素先行地域の概要
大きな特色は「久慈地域エネルギー株式会社」の存在です。
これは宮城建設株式会社など久慈市内の民間企業4社が2017年に設立し、翌年に久慈市が資本参加した、岩手県初の自治体新電力会社です。現在、水力発電所で作る再エネ「アマリングリーンでんき」をアンバーホールなど市内200以上の建物や設備に供給しています。地域外に流出していたエネルギー費用を地域内にとどめることで、お金やモノ、人を循環させて、まちを元気にしていくことを目指しています。
電気の発見や語源にもつながった琥珀。その一大産地の久慈。そこで生み出される電気を使うアンバーホール。この人口3万5千人ほどの小さな都市で行われている挑戦が、輝く太陽のような明るい未来につながることを期待したいですね。
そんな久慈市の話も聞ける、地域新電力に関するシンポジウムをご案内します。
名称: シンポジウム「脱炭素地域づくりと地域新電力~地域の経済循環をめざして~」
日時: 2023年2月16日(木)14:00~7:00
会場: Natuluck飯田橋東口駅前店/オンライン
主催: パワーシフト・キャンペーン
参加費: 無料
主な内容:
1.パワーシフトから自治体・地域新電力調査の紹介ほか
パワーシフト・キャンペーン/国際環境NGO FoE Japan 吉田明子
2.脱炭素先行地域、地域経済循環をめざす自治体の取り組み
(岩手県)久慈市 港湾エネルギー推進課 島袋龍二さん(オンライン)
(滋賀県)湖南市 環境経済部 環境政策部 地域エネルギー室 池本未和さん(会場)
3.地域新電力の可能性と今後
うすきエネルギー 小川拓哉さん(会場)
能勢豊能まちづくり 榎原友樹さん(オンライン)
中之条パワー 山本政雄さん(オンライン)
4.交流会(飲食なし)
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