伝統も未来も’綱’げる 沖縄県与那原町

11月12日・13日に、沖縄県で国内最大級の自転車競技「ツール・ド・おきなわ」が3年ぶりに行われました。2日間で国内外の市民・選手約2,500人が参加。最長210kmを走破する競技です。

舞台はヤンバルクイナで知られる沖縄本島北部の山原(やんばる)。豊かな自然が多く残る地域で、そんな中を自転車でピューっと風のように駆け抜けるのですから、苦しいながらも爽快な気分が味わえるでしょうね。

やんばるが「走りたくなるところ」なら、こちらは「歩きたくなるまち」です。沖縄本島南部にある与那原町(よなばるちょう)です。440年あまりの歴史を誇る与那原大綱曳が有名です。

「昔、害虫による稲の不作で人々が餓死寸前にまで追い込まれた年があった。困り果てた村頭が、姥捨て山に捨てられていた老人に相談しに行った。そして、”野山の草を集めて焼き、みんなで鐘やドラを叩き、大声を出しながら綱を曳きなさい”という言葉を授かった。その通りにしてみたところ、害虫が全滅し、豊作になった。」こんな言い伝えに由来しているそうです。

与那原町:与那原大綱曳

この祭りには、園児は踊りを練習し、小学生は田植えや稲刈りを手伝い、中学生は太鼓や踊りで参加。子供から大人まで幅広い世代がこの日を待ち望み、町の人々にとって大綱曳の日は「みんなが与那原に帰る日」と認識されています。

地域の歴史と伝統を大切にしながらも、与那原町は未来に向けた取り組みにも積極的です。先日公表された脱炭素先行地域(第2回)にも選ばれました。プロジェクトのテーマは「みんなで創る地域脱炭素社会と活気あふれる美らまち与那原」~新しい未来へ綱(つな)げて~、です。’繋げて’ではなく、’綱げて’としているところに郷土愛があふれていますね。

さまざまな脱炭素の取り組みが行われていますが、「自動車に替わる多様な地域モビリティ(電動キックボード、電動サイクル、グリーンスローモビリティ)やコミュニティバスの運用改善を組み合わせたMaaSを導入するとともに、水路・公園エリアにソーラーアーケードを設置し、亜熱帯性気候においても歩きたくなるまちづくりを進める」という取り組みもあります。

環境省: 脱炭素先行地域(第2回)計画提案の概要(p.26)

与那原大綱曳は町民でなくても綱を「作る」「担ぐ」「曳く」ことができるそうです。これは確かに、歩きにいってみたい町ですね。