ずっと昔に見たことがある、こんなCMを思い出しました。
電車の中。誰かが置きっぱなしにしていった空き缶。ころころと電車の中を転がる。誰かの足もとで止まるが、その足が缶を蹴り放つ。再び缶はころころ転がり、別の人の足元へ。その足がやはりまたその缶を蹴る。また転がっていく…。
10月、フィリピンで環境活動家が横断幕を掲げて声を上げました。その横断幕には「私たちは世界のゴミ捨て場ではない(We are NOT the World’s Dumpsite)」と書かれています。
彼らはフィリピン政府に対して、(廃プラスチックの規制を強化した)バーゼル条約の2019年改定の批准とともに、一切の廃棄物の輸入を禁止するように呼びかけています。
先進国が「再生資源」を発展途上国に輸出しています。一般社団法人 産業環境管理協会が2022年7月に公表した「リサイクルデータブック2022」を見ると、日本の輸出量の内訳(2019年)があります。
多い順に、
・鉄鋼スラグ 11,516,000トン
・鉄鋼のくず 7,650,000トン
・古紙 3,142,000トン
・硫黄 1,103,000トン
・プラスチックのくず 898,000トン
などがあり、合計で2,800万トンを輸出しています。
1980年代に、先進国から大量の廃棄物が途上国に不法投棄される事件が頻発したため、こうした課題に対処するために1989年にバーゼル条約(有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約)が採択されました。
2019年の改定で廃プラスチック規制が強化され、日本から輸出される廃プラスチックの量も減りました(2016年153万トン、2017年143万トン、2018年101万トン)。しかしそれでも、先進国から途上国に持ち込まれた廃棄物あるいは再生資源の不法投棄・不法処理はいまだに撲滅できず、環境問題として続いています。
途上国が抱える問題は、先進国とも大いにつながりがあり、先進国の行動が原因となっているものもあります。私たちは、気づかないうちに、目の前に転がってきた空き缶をとりあえず蹴飛ばし、とりあえず安心しているなんてことはないだろうか…。そんなことが気になってしまいます。
さて、ジェトロ・アジア経済研究所の「途上国の環境問題を多様な分野から理解する」オンラインセミナー第2回についてご案内します。
名称: 連続オンラインセミナー 「途上国の環境問題を多様な分野から理解する」
第2回「サーキュラー・エコノミー:国際リサイクル・国際リユース」
日時: 2022年11月10日(木)13:30~15:30
会場: オンライン
主催: ジェトロ・アジア経済研究所
参加費: 無料
内容:
・国際資源循環:輸出入規制強化とその影響
小島道一 (ジェトロ・アジア経済研究所)
中国やインド、東南アジア諸国では、サーキュラー・エコノミーに向けた取り組みを始めてきている。その一方で、2018年の中国の再生資源の輸入規制の強化、および、バーゼル条約の付属書改定は、国際リサイクルに大きな影響を与えてきている。どのような変化がおきているか、今後、どのような方向性に向かうべきかについて論じる。
・アジアの中古品貿易:ベトナムの中古農業機械輸入を中心に
坂田正三 (ジェトロ・アジア経済研究所)
先進国から途上国への中古機械の輸出は、グローバルな規模で資源節約や環境保護に貢献するとともに、途上国のさまざまな産業の生産性向上や技術移転、雇用創出といった効果も生む。一方で、最終処分の負担の増加、産業保護・育成の阻害といった理由から、中古機械の輸入を規制している国も多い。ベトナムの中古農業機械の輸入と利用の実態を通して、中古機械の貿易がもたらす影響と課題を明らかにする。
・古着の国際貿易:発展途上国と先進国の関係
福西隆弘 (ジェトロ・アジア経済研究所)
開発途上国で古着が大量投棄されているとニュースで報道されています。貧しい人達に無料で提供されていると思われることも多いですが、古着の多くは商品として売買されています。途上国で生産された衣料品が先進国に消費された後、古着として再び途上国に輸出される様子を、貿易統計から分析します。古着の需要と供給は国の豊かさによって決まっていることが示されます。
詳しくはこちらをご覧ください。
https://www.ide.go.jp/Japanese/Event/Seminar/221110.html