これは相手がゴジラだけに、全く油断なりません。「決して口の中に手を入れて持ち上げないように」など、注意書きも多いです。南部鉄器の小さな工房「及富」(おいとみ)が作った「南部鉄器ゴジラ」です。
高さ約30cm、鉄瓶本体の重さは約8kg。鋭い歯に、鈍い銀色に輝く大きな目。南部鉄器の重量感とゴジラの威容。強烈な存在感ですね。
ところで南部鉄器の産地は二つあります。その源流の一つは現在の奥州市で平安時代末期に奥州藤原氏が始めたもの。もう一つは現在の盛岡市で江戸時代に南部藩が始めたもの。戦時中の生産停止やアルミ鍋の普及など、長い時代の変遷と盛衰を生き抜いてきた両地域の鋳物組合は、1959年に共同して「岩手県南部鉄器協同組合連合会」を設立し、現在の「南部鉄器」という名称に正式に統一しました。現在では、アジアや欧米でも高く評価される国際的な伝統工芸品となっています。
この南部鉄器の及富で今年4月に脱炭素に向けた挑戦がありました。
通常は石炭を乾留させてできるコークスを使用して鉄を溶かしています。今回は岩手大学の協力のもと、コークスの1割を、植物由来の固形燃料「バイオコークス」に置き換えて鋳物を作る実験が行われました。
結果は良好。鉄器の品質も良く、これからバイオコークスの使用を増やしていけるだろうという展望を得られました。CO2削減のほかにも、硫黄分が少ないことによる不良低減、鋳鉄の高強度化、軽量化も期待できるのだそうです。
バイオコークスは、平成23年に新エネルギー財団から新エネ大賞の資源エネルギー庁長官賞を受賞しています。この研究の第一人者である近畿大学バイオコークス研究所の所長、井田民生氏へのインタビュー記事があります。読みやすいですよ。
原料の調達や種々の原料の配合方法、操業コストなど、克服すべき課題はあるそうですが、何しろ純国産のエネルギー源ですから、これからの展開に期待したいですね。