バイオナノマテリアルの最前線 人知を超えた自然の営みを活用する

イギリスでこの9月に新しく首相に就任したリズ・トラス氏は、「鉄の女」マーガレット・サッチャー元英首相になぞらえて「鉄の女2.0」。19世紀末のドイツの政治家ビスマルクは「鉄血宰相」。若者の言うことを聞き入れてくれない年寄りは「石頭」。鉄だの石だの、確かに硬いですよね。

意思の強さ、頑固さを表す例えに、これからはCNF(セルロースナノファイバー)が使われるかもしれません。何しろ鋼鉄の5分の1の軽さで5倍の強度があるのですから。例えば「あの人って本当に、CNFの男だよね」のように。いや、しかし、これはゴロも良くないし、全くピンとこないですね。どうもこれは、無さそうです。

そういう使い方はできませんが、このCNF、植物から取り出すナノサイズの物質で、環境に優しい、強い、軽い、重さに対する表面積が大きい、膨張性が低いなど、さまざまな特性があります。その活用範囲は非常に広く、化粧用品、医薬用品、自動車、家電製品、住宅建材など様々な製品の材料に使うことができるため、その普及が大いに期待されています。

3年前には”木からできたスーパーカー”として、東京モーターショーにこんな車が展示されました。

CNFを使ったNCV(ナノセルロースビークル)です。環境省の委託事業で22の大学・研究機関・企業が協働して完成しました。

京都大学のサイトでこのプロジェクトの詳細が見られますので、こちらをご覧ください。

さて、京都大学バイオナノマテリアル共同研究拠点とナノセルロースジャパン(NCJ)が主催するシンポジウムがありますのでご案内します。

名称: 京都大学 生存圏シンポジウム 
    バイオナノマテリアルシンポジウム2022 〜アカデミアからの発信〜

日時: 2022年10月27日(木)13:00〜17:10 
会場: 京都大学 /オンライン 
主催: 京都大学バイオナノマテリアル共同研究拠点、ナノセルロースジャパン(NCJ) 
参加費: 無料 
主な内容:
セッション1
「ナノセルロースによる乳化と複合材料への展開」
藤澤 秀次 東京大学大学院 農学生命科学研究科 生物材料科学専攻
「表面修飾セルロースナノウィスカーを用いた固体表面の機能化」
荒木 潤 信州大学 繊維学部 化学・材料学科
「セルロース利用研究におけるデータ解析・機械学習の活用」
     寺本 好邦 京都大学大学院 農学研究科 森林科学専攻

セッション2 
「バイオナノマテリアルの半導体機能・用途開発」
    古賀 大尚 大阪大学 産業科学研究所 自然材料機能化研究分野
「極低温で作動する導電性CNFネットワーク」
    矢野 浩之 京都大学 生存圏研究所 生物機能材料分野
「食用こおろぎからのキチンナノファイバーの製造とその評価」
    伊福 伸介 鳥取大学 工学研究科 化学・生物応用工学専攻
「機械解繊フィブロインナノファイバー補強キトサン繊維の開発」
    岡久 陽子 京都工芸繊維大学 繊維学系 バイオベースマテリアル学専攻

セッション3
「森と海の多糖ナノファイバーで創出する細胞培養基材」
    畠山 真由美 九州大学 大学院農学研究院 環境農学部門 
「レザーライク木質系素材への挑戦」
    足立 幸司 秋田県立大学 木材高度加工研究所
「木材の物性発現機構の解明に向けて 〜放射光を用いた微細構造解析〜」
    堀山 彰亮 京都府立大学 大学院 生命環境科学研究科

詳しくはこちらをご覧ください。