高知県と愛媛県の境目に位置する、韮ヶ峠(にらがとうげ)。1862年3月、この時28歳の坂本龍馬がこの峠を越えて土佐藩を脱藩。明治維新に向けてまた一つの歯車が回り始めた瞬間でした。高知市から梼原(ゆすはら)町を抜け、韮ヶ峠を越えて愛媛県に入り、さらに山口県下関市まで続く道のりは「坂本龍馬脱藩の道」とされていますが、他にも多数の幕末の志士が往来したことから、その一部は文化庁の「歴史の道100選」にも選定されています。
「脱藩の地」で知られる梼原町は、標高1,455m。面積の9割が森林で自然豊かな小さな町です。
ここに高知県で唯一の木造芝居小屋「ゆすはら座」があります。30年ほど前に建築家・隈研吾氏がこの地を訪れた時、「ゆすはら座」の美しさと温もり、柔らかさに触れ、その背景にある設計思想、建築技術に感銘を受け、木材の可能性や建物と自然との調和についてインスピレーションを得ます。この体験はその後、隈氏が木造建築にこだわっていく原点になりました。梼原町には隈氏が手がけた総合庁舎、図書館、駅などの建築物が6つもあり、「隈研吾の小さなミュージアム」と呼ばれています。
中でも梼原町総合庁舎は外部環境と呼吸する自然空調や太陽光発電、氷蓄熱などの技術が組み込まれており、サステナビリティが高く評価され、CASBEE(キャスビー、建築環境総合性能評価システム)の最高位の格付けであるSランクを得ています。
実はこの梼原町、環境モデル都市として知られており、脱炭素先行地域(第1回)にも選定されています。環境への取り組みの歴史を簡単に追うと、以下のようになります。
1929年 小規模水力発電をスタート。
1998年 町営プールで地熱利用を開始。
1999年 風力発電施設を設置。
2000年 日本の団体として初めてFSC森林認証を取得。
2008年 木質ペレット工場の操業開始。
2009年 環境モデル都市に指定。
梼原町の公式サイトに環境への取り組みが紹介されています。
脱藩と脱炭素。時代も意味も全く違いますが、どちらも新しい時代への入り口ですね。
梼原町の吉田尚人町長がパネリストとして参加し、前環境大臣の小泉進次郎氏が基調講演を行うシンポジウムがありますので、ご案内します。以下、抜粋です。
高知県脱炭素シンポジウム ~みんなで語ろう、高知の未来~
日時: 2022年9月10日 13:30~16:30
会場: (1) オンライン (2) 高知県立高知追手前高等学校芸術ホール
主催: 高知県林業振興・環境部 環境計画推進課
参加費: 無料
内容:
本年3月に策定した「高知県脱炭素社会推進アクションプラン」の取組の一環として、「高知県脱炭素シンポジウム」を開催いたします。基調講演には衆議院議員(前環境大臣)の小泉進次郎氏をお招きして、「森林率日本一の高知から始まる環境と経済が一つになる時代」と題してご講演いただくとともに、濵田知事と対談いただきます。
また、県内高校生、事業者、NPO、行政の代表者をパネリストとして、高知の未来の姿や、今から自分たちにできる取り組みなどについて、会場の参加者も一緒になって考える機会となることを目的としたパネルディスカッションも行います。
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