2018年3月、ケニアの大地に長さ数kmにおよぶ裂け目が突然現れました。場所によっては幅も深さも15m以上ある、巨大な地割れです。主要道路を分断してしまい、付近の住民が救出されるなどして、大きなニュースとなりました。
アフリカ大陸には、ケニアを通過して大陸を縦断する「大地溝帯」と呼ばれる巨大な谷があり、その大きさは幅35-100km、長さ7,000kmにも及びます。3,000万年前から形成が始まったとされ、現在もその動きは続いており、1,000万年後にはアフリカ大陸が分裂すると考えられています。
2018年に現れた裂け目の背景には、このような地殻の動きや浸食作用も関係しているそうです。自宅の庭にいきなりこんな裂け目ができたら参りますよね…。しかし、大陸の分裂そのものは年間で1~2cm程度なので、2018年のようなことは滅多に起きるものではないようです。
それよりも、この大地溝帯に秘められたエネルギーが重要です。大地溝帯が形成され、そして今も地殻を動かしている主な要因はマントルの上昇です。この地域には実際に火山が多く存在し、地熱温度が高いのです。
この地質的な特性、そして日本の高い技術が大いに活かされて、現在ケニアは、必要な電力の48.4%を地熱発電でまかなっています。
こちらの動画はケニア最大のオルカリア地熱発電所の特集です。(英語とスワヒリ語の番組なので、アフリカっぽさが感じられていいですよ)
しかし、ひるがえって肝心の日本を見ると、地熱発電の発電量は全体のわずか0.2%です。1966年には最初の地熱発電所が稼働し始めたものの、その後あまり広がっていません。
JOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)のサイトによると、日本の地熱資源量は世界第3位(2,300万kW)で、第4位のケニア(700万kW)の3倍以上もあります。
地熱資源に恵まれていますが、それをあまり活用できていないのが現状です。
・開発期間が長い。
・開発コストが高い。
・地域住民の理解が得られないことがある。
・国立公園や温泉地に地熱資源があるため、開発できていない。
といった課題があるようです。
しかし、2021年に政府が打ち出した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」では、「安定的な再生可能エネルギーの導入に資する電源として地熱発電の推進は非常に重要である」としており、法律の見直し、金融支援の充実、次世代技術の開発支援など、これらの課題を克服して行くための方向性が述べられています。
去る6月にも、秋田県湯沢市の栗駒国定公園内での新たな地熱発電所(かたつむり山発電所)の建設が決まりました。
国外の情勢に左右されないエネルギー源である点を考えると、なおさら地熱発電の利点は大きいですよね。これからの進展に期待したいですね。