原子力 天然ガス EUタクソノミー

ある中学校で「一般的に男性よりも女性の方が台所仕事をすることが多い。それはなぜか。自分の考えを書きなさい」と生徒に問うたところ、一人の生徒が「男は不器用だから」と答えたそうです。

その話を聞いた時、「おもしろい答えだなぁ」と笑いつつも、自分が思いつくような答えではなかったので、思考の枠が広がった気がして一つの学びとなりました。

さて、6月14日に欧州議会の二つの委員会が、持続可能な経済活動かどうかを示す「タクソノミー」に天然ガスと原子力発電を含める案について、反対決議を採択しました。

まずEU(欧州連合)について、押さえておきたい名称が2つあります。
「欧州委員会」は政策執行機関で、法案を提出できる唯一の機関。
「欧州議会」は二つある立法機関のうちの一つで、もうひとつは欧州理事会。欧州議会の中には20の常設委員会があり、法案の修正などを行います。

今年2月に公表されて話題になった「タクソノミー」案は「欧州委員会」が提出したもので、今回それに反対したのは「欧州議会」の二つの常設委員会(経済通貨委員会と、環境・公衆衛生・食品安全委員会)というわけです。

このあと7月4日から7日までの欧州議会本会議において投票が行われます。そこで議員の過半数(353人以上)が提案に反対すれば、欧州委員会は案を撤回するか修正しなければなりません。

ところで、反対の理由について、欧州議会のプレスリリースによると「議員らは、持続可能な経済への移行期に安定したエネルギー供給を保証するという、原子力や天然ガスの役割を認識している。 しかし、委員会が提案した技術的スクリーニング基準は、タクソノミー規則第3条が定める’環境的に持続可能な経済活動の基準’を尊重していないと考える」とあります。

理由を読むまでは「原子力・天然ガスはそれぞれ放射性物質と、CO2の問題があるため良くない」ということかなと想像していたので、提案されたスクリーニング基準に問題がある、とされている点が少し意外でした。スクリーニング基準が変更されれば受け入れる余地が残っているとも読めるためです。

しかし、Climate Home Newsの記事(2022年6月14日付)で紹介されている何人かの議員のコメントを読んだらまた分からなくなりました。

「今後しばらくの間、ガスと原子力が必要ないと言っているのではない。持続可能な事業に向けられた資金の使い道を間違えてはならないという観点から見ているのだ」

「移行期の燃料として天然ガスを使う、という考えはもう終わりだ。戦争が起こってしまい、化石燃料に支払う代金がロシアの軍資金になる恐れがあるからだ」

「(2014年に)ロシアがクリミアを併合した後、EUはロシアへの依存度を下げる政策をとったはずなのに、逆に依存度は高まった。同じ間違いをおかしてはならない。だから、こんな違法なグリーンウォッシングには反対しなければならない」

などの声がありましたが、スクリーニング基準に関する話がありませんでした。

また、(非EU加盟国)ウクライナの国会議員はツイッターで「天然ガスを”気候にやさしい”とレッテル貼りすることは、グリーンな未来からの別離であり、プーチンの戦争継続を助ける贈り物だ」と呟いています。

経済、環境、科学、政治、外交…。考るべきポイントが多すぎて大変な議論ですが、自分の中にも多様な観点を持つことは大切ですよね。

さて、認定NPO法人FoE Japanが「原発はグリーンか?欧州のエネルギー事情とEUタクソノミーのゆくえ」というタイトルで7月1日に無料セミナーを行います。

詳細はこちらをご覧ください。

【参照情報】

(1)欧州議会のプレスリリース
Taxonomy:  MEPs object to Commission’s plan to include gas and nuclear activities

(2)Climate Home Newsの記事
EU lawmakers form cross-party coalition to block gas and nuclear from green taxonomy