ロシアと石油、そしてノーベル兄弟

ロシアにおける石油開発の歴史をみると、その初期に、ノーベル兄弟というスウェーデン人が重要人物として登場します。

兄のロベルト・ノーベル。弟のルートヴィッヒ・ノーベル。さらにもう一人の弟は、ダイナマイトの発明、ノーベル賞の創設で知られるアルフレッド・ノーベルです。

ロベルトとルートヴィッヒは1875年、カスピ海沿岸のバクー油田(現在はアゼルバイジャン共和国)で石油採掘を始め、4年後には株式会社Branobel(ノーベル兄弟産油会社)を設立します。アルフレッドも出資しました。掘削、製油、販売、パイプラインと鉄道を使った輸送も行い、世界初となるタンカー「ゾロアスター号」も作りました。

ノーベルの石油関連施設|バクー|1876-1920年(所蔵:スウェーデン国立科学技術博物館)

やがて世界最大規模の石油会社に成長。最盛期にはロシア最大の石油会社として石油製品の40%を生産し、「バクーの奇跡」と呼ばれ、ロシアの石油産業の発展史において重要な役割を果たしました。

しかしその後、Branobelは1920年に国有化され、1969年に解散。その90年の歴史に幕を閉じました。バクーは現在、カスピ海の油田開発で栄えており「第2のドバイ」と呼ばれています。長い歴史のなかには、こんな時期もあったのですね。

さて、ウクライナ情勢に出口が見えない中、EUはエネルギー供給でロシアに依存している状況から脱却するための具体策をまとめ、5月18日に「リパワーEU」として公表しました。

これについて京都大学大学院の山家公雄特任教授がコラムで解説しています。

No.316 欧州の脱炭素・脱ロシア対策「リパワ―EU」

2月24日のウクライナ侵攻から2週間後の3月8日に、EUは脱ロシア策の方針を発表した。3か月を待たずに5月18日具体策“REPowerEU Plan”を公表した。2022年末までにロシア産ガス輸入量の2/3を代替し、2030年までに脱ロシアを完結する。輸入元の多様化と再エネ・省エネの前倒しを進める。前倒しの対象となるのが2021年7月に取り纏めたグリーンニューディール対策である” Fit for 55”である。今回は、『リパワ―EU』の背景とポイント、そして日本への示唆について解説する。

No.316 欧州の脱炭素・脱ロシア対策「リパワ―EU」

以下のような構成になっています。

1. 脱ロシア天然ガスを決断した経緯
2. リパワーEUの概要:調達多様化と再エネ・省エネ前倒し
3. リパワーEUの課題
4. 終わりに 後手に回る日本