なかなか大きなインパクトのある決断がなされました。背に腹は変えられない、というところでしょうか。
欧州連合欧州委員会が2月2日に原発と天然ガス発電について、「環境的に持続可能な経済活動」として位置づける案を承認しました。
民間からの追加投資がなければ脱炭素社会に向けたエネルギー転換はできず、欧州では年間46兆円相当が必要だとされており、やはり移行期の安定的なエネルギー源を確保するためには、現実的な選択をせざるを得なかったようです。
条件付きであっても、こうしてタクソノミーに含めることで民間投資が入りやすくなります。
〇原発に関する条件としては、
・(放射性廃棄物全体の99%を占める)低レベル放射性廃棄物の最終処分施設がすでに稼働していること。
・(放射性廃棄物全体の1%を占める)高レベル放射性廃棄物の処分施設が2050年までに稼働するよう、具体的計画を策定すること。
・放射性廃棄物を第三国へ輸出しないこと。
・運転延長は2040年まで、新増設は2045年までに認可を得ていること。
などがあります。
〇天然ガスに関する条件としては、
・CO2のライフサイクル排出量が100gCO2e/kWh以下であること。
(温室効果ガス排出量がCO2換算量で100グラム/キロワット以下であること)
・温室効果ガス排出量が多い石炭火力などの発電施設からの置き換えであること。
・2035年末までに再生可能または低炭素ガスに切り替えること。
などがあります。
ところでこの話はまだ「案」であって、いますぐに効力を持つものではなく、まだ手続きが残っています。
今回発表されたのは、EUタクソノミーの「補完的な委任規則案」(Complementary Delegated Act)であり、このあと欧州議会と欧州理事会において4ヶ月(最長6ヶ月)にわたって精査されます。欧州議会では過半数(353人以上)の議員の反対が、欧州理事会では最低20加盟国以上の反対がでれば否決されます。ただ、現在のEU加盟国が27カ国であることを考えると、これはかなり高いハードルですよね。
このまま進めば2023年1月1日から適用が始まります。しかしこの案については加盟国内で激しい対立がありますし、多くの環境保護団体からも反対の声が上がっています。どのような展開があるのか、見守っていきたいところです。
欧州連合のサイト記事:
“EU Taxonomy: Commission presents Complementary Climate Delegated Act
to accelerate decarbonisation”