化石賞の常連だった日本が下した英断。その気候非常事態脱出における位置を確認するニュースです。
2021年4月22日と23日に開かれた米国主催の気候変動に関する首脳会議で、「2013年度比で2030年度には温室効果ガスの排出を46%削減する」と菅首相が表明しました。これは、これまでの目標だった26%にくらべて大きな進展であると同時に、2019年度時点では14%しか削減できていないのですから、あと24%を10年程度で達成するという思い切った数値です。
ところがこれでも、パリ協定の目標達成には全く足りません。昨年2020年の世界での人間活動による二酸化炭素排出量は340億トンで2019年にくらべて26億トンも減少したと言われています。これだけの減少(一年で7%減少)は、これまで観測されたことがありません。新型コロナ禍が大きく影響したのでしょう。このハイペースをこれからも維持してはじめてパリ協定の目標も夢ではないとネイチャー(Nature Climate Change)に出ているからです。
しかも、26億トンの排出減少にもかかわらず4月14日配信のニュース「二酸化炭素濃度の上昇」でお知らせしたように、大気中の二酸化炭素は却って増えています。ついに420ppmを突破しました。今回の会議の初日に、バイデン政権で新設されたケリー気候担当大統領特別特使(the United States Special Presidential Envoy for Climate)が「2050年までにネットゼロを達成しても破滅的な温暖化を避けることはできない。大気から二酸化炭素を捕集して濃度を減らす算段、ネガティブ・エミッションが必要だ」と語っているのは、正にこのことです(ハフィントンポストの記事)。
一歩踏み出すことは大英断ですが、まだ百里の道が残っていることも覚悟しておかないとなりません。連載中のレター「気候危機とは何か」も、その覚悟を迫っています。