国立環境研究所〜「地域における『脱炭素社会ビジョン』策定の手順」〜

国立環境研究所福島支部が「地域における『脱炭素社会ビジョン』策定の手順」公表しました。詳しくはこちらのPDFファイルをご覧ください。

以下、「はじめに」の部分のみ抜粋します。
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本文書は脱炭素社会を実現しようとする地域において、目標としての「脱炭素社会ビジョン」を策定することが有用であると考え、そのための考え方や手順をまとめたものである。手順においては既存の研究や京都市・滋賀県をはじめとするいくつかの地方自治体における「低炭素社会」ビジョン構築の実践を参考にしている。読者としては地方公共団体の企画部局・環境部局に加え産業・交通などの関連部局の担当者、脱炭素社会ビジョン策定を支援する専門事業者を想定しているが、脱炭素社会の実現に関心のある事業者、市民団体、教育関係者、学生など、行政担当者以外の人々にとっても有益な情報があるものと考えている。

脱炭素においては温室効果ガス排出量を実質ゼロにするという明確で定量的な目標が前提とされるため、脱炭素社会ビジョンにおいても排出量の計算は避けられない。本文書においても主要な部分の計算手法の例を紹介したが、実践にあたっては相当量のデータ収集と専門的な計算作業(及び、これらを担うモデル分析チーム)が必要となるだろう。これらの作業には相応の人的資源が内部にあるか、外部からこれを調達する必要がある。計算には専門的な知識が必要だが、脱炭素社会ビジョンの目的は脱炭素に向けた効果的で効率的な取り組みを立案・実施することであり、数値計算はそのための手段であることに留意されたい。

ここで示す手順は福島県大熊町において2020年度に活用され、策定された「大熊町ゼロカーボンビジョン」は2021年2月に公表されている。本文書でも事例として同ビジョンの概要を紹介する。

なお、本文中で参照する文献や統計データについては可能な限りインターネットで公開されており一般に入手可能な日本語の情報を選択したが、一部の専門的な内容については書籍、一般には無料公開されていない日本語の学術論文、英語で書かれた学術論文等も含まれる。なおインターネットで公開されている情報は全て2021年2 月上旬にアクセスしたURL を付記している。

最後に、脱炭素社会は社会の多くの側面、例えば住宅、交通、産業、エネルギー供給、土地利用などと関わり、これらに対して現状からの変更を迫る。しかし脱炭素による気候変動の緩和は地域の唯一の目標ではない。
それぞれの分野にも課題があり、脱炭素化と同時にそうした課題を解決することも重要である。このような観点を取り入れた多課題解決のアイデアとして、「SDGs(持続可能な開発目標)」と「地域循環共生圏」の考え方を脱炭素社会ビジョンに活用する方法についても本文書の後半で簡単に紹介している。社会の各分野と否応なしに関連するという脱炭素の特徴を活用し、脱炭素社会を目指す取組がより良い地域づくりを進める契機となることを期待する。
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