*レター「地域協働による脱炭素の取り組み」を配信します。図を含む全文は、こちらのPDFファイルを御覧ください。
「地域協働による脱炭素の取り組み」
茨城県地球温暖化防止活動推進センター 副センター長 川島省二
茨城県地球温暖化防止活動推進センターでは、県内920社の会員事業所と地球温暖化防止活動推進員314名のネットワークを活用し「ひと・もの・こと」が動き出す生物多様性の保全や脱炭素社会に向けた取り組みを地域と協働して行っています。ここでは、その内の幾つかを御紹介します。
1.こどもたちのSDGs教育~市民の憩いの場「千波湖」で11年間、毎月開催~
未来を担う子供たちが自然の恵みを認識し、地域の資源を将来にわたって守りたいと感じてもらう自然環境学習会を毎月開催し、既に11年間継続しています。(https://www.youtube.com/watch?v=hHWPKsnMIrA)
茨城県水戸市の日本三大名園「偕楽園公園」の区域内にある水戸のシンボル千波湖は、多くの人が訪れる憩いの場です。この千波湖の魚・鳥・野鳥・昆虫・ホタル観賞などについて、毎月テーマを変え、親子で楽しめる体験型の学習会を開催しています。多い時には200人以上の市民が参加し、自然に親しむと同時に地球温暖化によって定着するようになった外来生物等も紹介しています。
2.地球温暖化防止活動推進員の養成講座~茨城県エコカレッジ職域コース~
地球温暖化防止対策法に基づく地球温暖化防止活動推進員の養成講座「茨城県エコカレッジ職域コース」を開催しています。講座では、地球温暖化から気候変動に関する地球規模の問題、地球にやさしい最先端技術の紹介、SDGs目標達成のための行動、ESG投資(環境、社会、ガバナンスを重視した投資)による成果発表、カーボンニュートラルな社会を目指すための意識改革など、脱炭素社会に向かうための基本的な知識を学んでいただいています。年間6回の講座を修了すると茨城県知事より地球温暖化防止活動推進員に任命され、地域の環境活動のリーダとして積極的に動いていただいています。(第六回エコカレッジ2021年1月は:https://www.youtube.com/watch?v=ZsQxhNMBN8U)
3.地球温暖化防止活動推進員スキルアップ研修会~脱炭素と気候非常事態を学ぶ~
地球温暖化防止活動推進員のスキルを維持していくため、我が国が取り組んでいる最新情報を伝える研修会を年4回開催しています。推進員が主体となり、県民にエコな行動の水平展開ができるよう、ワークショップやリサイクル工作の方法などを伝えています。
本年度、国が発令した気候非常事態宣言においては、第一線で活躍されているCEN代表の山本良一先生をお招きして講演会を開催しました山本先生は水戸市の出身で、いまの気候崩壊を止めるために残された最後の時間を第二の明治維新にたとえ、江戸時代から明治維新への変革期に活躍した水戸が、まだ気候非常事態宣言をしていないことを挙げ、この動きは政治の決意表明でもあり、多くの自治体が気候非常事態宣言することを切望すると、力強くお話されました。気候非常事態宣言自治体は、全国で47(2021年2月21日現在)となり、県内では取手市のみに留まっていることから、県も市町村も早期に宣言すべきと、力強く講話を締めていただきました。当センター主催の講演会の模様は各回ZOOMによって各都道府県の地球温暖化防止活動推進センターにリアルタイム配信を行うと同時に、後日、HPへYouTubeにて掲載しています(https://www.youtube.com/watch?v=DtGOQHYRR98)。
4.脱炭素チャレンジカップ ~茨城県代表団体の支援~
環境省、文部科学省が後援し、地球温暖化防止全国ネットとセブン-イレブン記念財団が共催する我が国最大級のエコプレゼン大会「脱炭素チャレンジカップ」に茨城県代表を選出しています。このアワードは、脱炭素を実践する団体を全国から募集し、厳しい審査を経て、28団体がファイナリストとして出場できるもので、脱炭素の甲子園とも呼ばれています。
当センターでは毎年8月に茨城県代表団体を決めるクールアースいばらき大会を実施しており、我こそはと思う団体に20分間のプレゼンテーションをしていただいています。審査員は来場視聴者100名の地球温暖化防止活動推進員にしていただくしくみです。最優秀賞となった団体は、当センターからチャレンジカップ事務局に向けてファイナリストの推薦をしています。
「脱炭素チャレンジカップ2017」に推薦したホタルネットワークmitoはファイナリストとなって大会でプレゼンテーションを行い、環境大臣賞金賞を受賞し、今年の2月の脱炭素チャレンジカップでは、茨城県代表の田中学園・緑丘学園が文部科学大臣賞を受賞する(https://youtu.be/2YV90dOzVtY)など、これまでに茨城県代表団体は2014年から8年連続ファイナリストとして出場を果たし、環境大臣賞2つ、文部科学大臣賞3つ、来場者投票No.1オーディエンス賞を4つ獲得する素晴らしい戦績を残しています。
ホタルネットワークmitoの受賞がきっかけになって、2018年に、河畔林を再生する「茨城セブンの森」がスタートしています。(https://www.7midori.org/katsudo/prevent_warming/711forest/ibaraki.html)こうして、地域市民の脱炭素への意識が醸成して更に活動が活発になっていくことが実感できます。
5.地球温暖化防止活動推進センターの啓発活動
当センターでは環境省が推進する国民運動「クールチョイス」の啓発や「うちエコ診断」の実施など、脱炭素化の基本的な行動を促しています。クールチョイスへの賛同を得る活動は、自治体開催の環境フェアやサッカーJリーグの試合会場で地球温暖化防止活動推進員とともにブースを出展し、クイズやリサイクル工作を来場者に提供しています。クールチョイスは毎年約3,000人に、家庭の省エネアンケートは約2,000人に賛同いただいています。
また、地域市民が一体となって脱炭素に向かうきっかけを提供することを目的に、県内で積極的にカーボンニュートラルな社会を目指して行動している首長を招き、講演会を開催しています。地球温暖化防止活動推進員や企業の環境CSR担当等が視聴し、首長の話を元にディスカッションを行い、気候変動適応計画や地域循環共生圏ローカルSDGsの推進を視野に入れながらカーボンニュートラルな社会を目指していく契機になることを目指しています。
おわりに
我が国は海に囲まれた緑豊かな風土であり、自然環境保護、歴史文化の継承、農産物の地産地消など、SDGsを知らなくても行われてきたことが多々あります。先人からの知恵を置き去りにすることのないよう、官民が一体となって現実味のある、地域協働による脱炭素活動の見える化を進めていけることを願っています。