アジアから来た「殺人スズメバチ」 根絶

温暖化が進むにつれてミツバチやスズメバチの生息地が北に広がる傾向があるそうです。暖かい期間が長くなると営巣期間も繁殖期間も長くなることや、冬の気温が上がると越冬の成功率が上がるので、個体数の増加につながります。

2019年にオオスズメバチ(Vespa mandarinia)が北米の一部で初めて発見されて、大きな騒ぎになりました。世界最大の狩りバチで、在来の生態系にとっても養蜂家にとっても大きな脅威ですし、刺されて命を落とすこともありますから、確かに怖いですよね。アメリカの報道でも「殺人スズメバチ(murder hornets)」と呼ばれて、人々は恐れました。侵略的外来種ということもあり、スズメバチ専用の殺虫剤の販売数が激増し、在来種のスズメバチまでも殺されてしまう状況になりました。

オオスズメバチの英名は”Asian giant hornet”でしたが、2022年に”northern giant hornet”と呼称が変更されました。アジア系の人々に対する憎悪犯罪や差別が増えていた世相もあって、2021年にアメリカ昆虫学会がガイドラインを改訂。民族や人種に言及する名称、不安を掻き立てる名称を禁止し、とくに侵略的外来種については特定の地域に言及する名称を非推奨としていました。

2024年5月にあった発表ですが、京都産業大学がアメリカ、カナダの大学や政府機関と共同でこのオオスズメバチの遺伝子を調査したところ、カナダに侵入した個体は日本に由来するもので、アメリカに侵入したものは韓国周辺が起源らしいことが分かりました。

そして、2021年の駆除を最後にその後3年間オオスズメバチが発見されていないため、先月18日に根絶宣言が出されました。

【アメリカ】政府、侵略的外来種オオスズメバチの根絶宣言。2019年に発見され駆除
(Sustainable Japan、2024年12月30日)

粘り強い活動のおかげで生物多様性を守ることに成功した一つの素晴らしい例ですね。一方、これがもし成功せずに北米で生息域をどんどん拡大していったならば生態系だけでなくアジア系の人々にどんな影響を与えていただろうか…、と想像すると、よけいにこの駆除活動に関わった方々に感謝したくなります。

さて、昨年12月にお伝えした「気候変動について今伝えたい、10の重要なメッセージ」(2024/25)について、詳しい解説イベントが行われますのでご案内します。

名称: 最新レポート解説イベント 「気候変動について今伝えたい、10の重要なメッセージ」~10 NEW INSIGHTS IN CLIMATE SCIENCE 2024/2025~
日時: 2025年1月27日(月)10:30~12:00 
会場: 長崎大学/オンライン 
主催: Future Earth国際事務局日本ハブ、長崎大学グローバルリスク研究センター
参加費: 無料 

主な内容:下記HPより抜粋 

開催の挨拶
Insight 1: 近藤 智恵子、長崎大学大学院総合生産科学研究科
Insight 2: 河本 和明、長崎大学大学院総合生産科学研究科
Insight 3: マダニヤズ・リナ、長崎大学大学院熱帯医学・グローバルヘルス研究科
Insight 4: 藤田則子、長崎大学大学院 熱帯医学・グローバルヘルス研究科
Insight 5: 西原直希、長崎大学海洋未来イノベーション機構
Insight 6: グレース・ウォン、総合地球環境学研究所
Insight 7: 昔宣希、長崎大学大学院総合生産科学研究科
Insight 8: シャリフィ・アユーブ、広島大学IDEC国際連携機構
Insight 9 : ナンダ・クマールジャナルダナン、地球環境戦略研究機関 気候変動とエネルギー
Insight 10:渡辺知保、長崎大学大学院プラネタリーヘルス学環
閉会挨拶

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