スウィートマン教授の甘くない話

去る7月、深海のマンガン団塊が酸素を生み出していることが分かったという論文が発表されました。

nature asia: 地球科学:深海の採掘対象が「暗黒酸素」を生み出す(2024年7月23日)

スコットランド海洋科学協会のアンドリュー・スウィートマン教授ら研究チームが、中部太平洋のクラリオン・クリッパートン海域の深海4,200mに広がるマンガン団塊を調査したところ、どうやらマンガン団塊が微弱な電気を帯び、電池のような働きをして海水中の酸素原子から酸素を生み出していることが分かったのです。

自然界に、植物の光合成以外にも酸素を生み出す仕組みがあったのか、と驚きました。最近は右を向いても左を向いても、「○○から二酸化炭素が発生している」とか、「こんなところからもメタンガスが発生している」とかいう話ばかり目にするので、「おー、酸素が出ている話か!いいね~!」とテンションが上がりました。

ところが、この話には重要な意味が含まれていることを知り、テンションが下がってしまいました。最近、マンガン団塊は、新たな鉱物資源として注目されていますが、深海での掘削による水質汚染が環境に及ぼす影響がまだしっかり分かっていません。この、ただでさえ慎重さが求められているところに、地球環境への酸素の供給源としての役割もあるということが分かったのですから、これはさらに慎重にならねばならないということです。

さらに、2025年中に採掘を開始する計画を持っていて、しかもこの研究に資金提供していたカナダの海底採掘会社メタルズ・カンパニーが、この発見に対する反論を9月に公表しました。「論文の著者らは、この研究結果の裏付けとなる信頼できる証拠を提示していない」としています。

The Metals Company: TMC Rebuttal to Claims of ‘Dark Oxygen Production’(2024年9月)

研究結果が間違っていたとしたら、それはそれで残念です。しかし、正しいことが証明されたら、また別の問題が待っているというわけです。どちらにしてもあまり”スウィート”な話ではないな…という、なんともモヤモヤした気持ちになっています。

さて、愛知工業大学が主催する「カーボンニュートラル地域貢献セミナー」をご案内します。

名称: 第2回AITカーボンニュートラル地域貢献セミナー
日時: 2024年10月31日、11月14日、11月28日、12月5日(全4回) 
会場: オンライン 
主催: 愛知工業大学
参加費: 無料 

主な内容:下記HPより抜粋 

【10月31日(木)】
「カーボンニュートラルの実現に貢献するヒートポンプ技術について」
工学部機械学科 廣田真史 教授

【11月14日(木)】
「太陽光発電システムの現状と課題」
工学部電気学科 津坂亮博 講師

【11月28日(木)】
「都市のオープンスペース 低炭素で持続可能な社会」
工学部社会基盤学科 川口暢子 准教授

【12月5日(木)】
「ペロブスカイト太陽電池の展望:技術動向と実用化への挑戦」
工学部電気学科 清家善之 教授

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