「音」が助けるか サンゴの回復

千葉県で「小松菜にヘビーメタルを聞かせて育てたら、鉄分が増えるかも!」というユニークな発想から生まれた「メタル小松菜」。何年もヘビメタを聞かせ続けているものの、残念ながら鉄分は増えていません。しかし良質の土壌で育てられたこの小松菜の味は良く、千葉市食のブランド「千(せん)」の第1回認定品にもなっています。

一方、海のサンゴ礁には、どうやら「音」が影響を与えているようです。

2018年に発表されたウッズホール海洋研究所の研究によると、「ただの砂地」「死にかけたサンゴ礁」「繁栄したサンゴ礁」の3カ所を比較した時、サンゴの幼生は、多様な生物の出す音・うなり声・鳴き声が聞こえる「繁栄したサンゴ礁」に他の2倍の率で定着したそうです。

ウッズホール海洋研究所:Coral Larvae Use Sound to Find a Home on the Reef(サンゴ

この発見は興味深いです。海中にコンクリートなどを沈めて人工魚礁を作るとき、繁栄したサンゴ礁で録音した音を聞かせてやればサンゴの幼生の定着率が良くなる可能性を示しているからです。

サンゴは海中の二酸化炭素を吸収して酸素を供給し、多様な生物のすみかを提供するなど、海洋生態系で重要な役割を担っています。海洋生物全体の25%の存在を支えているとも言われています。

そのサンゴが今、危機に直面しています。4月15日に米海洋大気局(NOAA)が、過去30年間で4度目となる世界規模の白化現象が起こっていると発表しました。昨年2月以来、大西洋、太平洋、インド洋に広がる54以上の国と地域で深刻な白化現象が起こっています。

NOAA confirms 4th global coral bleaching event
(NOAA 4度目の地球規模のサンゴ白化現象を確認)

水温の上昇によってサンゴに共生する藻類が失われ、サンゴは栄養を得られなくなり、その状態が続くとやがてサンゴも死滅します。通常、水温が下がればサンゴ礁は回復していきますが、カリブ海のある海域のサンゴ礁では、冬に水温が低下したにもかかわらず回復しなかったという事例もあります。

NOAAのデレック・マンセロ博士によると、世界の海水温度が上昇するなか、白化現象の頻度は増して、より深刻になっているそうです。NOAAは「この地球規模のイベントは、地球規模のアクションを必要としている」との声明を出しています。サンゴは、漁業、観光産業を支え、高潮や津波被害を軽減するなど、さまざまな恩恵をもたらしてくれる存在です。守り、増やしていきたいものです。

さて、2月14日のニュースレターで紹介したシンポジウム「サステナビリティ(持続性)に向けたプラネタリーヘルス:健康な地球のための革新的な解決策をめざして」の映像と資料が公開されたので、ご案内します。

名称: SDGs symposium 2024 – サステナビリティ(持続性)に向けたプラネタリーヘルス:
    健康な地球のための革新的な解決策をめざして

開催日: 2024年2月27日

こちらから動画を見ることができます。

主な内容:下記HPより抜粋 

〇開会の辞
・福士 謙介(東京大学未来ビジョン研究センター センター長、教授)
・アントワーン・ブーケ(シュプリンガーネイチャー・ジャパン 代表取締役社長)

〇 基調講演1
「プラネタリーヘルス: 何、なぜ、どうして?」
渡辺 知保(長崎大学教授、同プラネタリーヘルス学環長)

〇 基調講演2:「2030年のSDGs達成に向けた中間点を迎えての課題および教訓と、
プラネタリーヘルスへの影響」
マグダレーナ・スキッパー(Nature編集長、Nature Portfolioチーフ・エディトリアル・アドバイザー)

Plenary1:「都市における熱曝露の健康リスクと対応」
キム・ユンヒ(東京大学 准教授)

Plenary2:「システム思考から見た健康的で持続可能な食事の課題」
西 信雄(聖路加国際大学大学院公衆衛生学研究科・研究科長、教授)

Plenary3:「プラネタリーヘルスにおける超学際研究への挑戦:
地域実践型のヘルシーエイジングに向けて」
鹿嶋 小緒里(広島大学 准教授)

Plenary4:「プラネタリーヘルスに関するJICAの取組」
西村 恵美子(独立行政法人国際協力機構(JICA)人間開発部グローバルヘルスチーム課長)

パネルディスカッション(全登壇者)
進行役:春日 文子(長崎大学 教授、Future Earth国際事務局日本ハブ事務局長)

〇閉会の辞
藤井 輝夫(東京大学総長)

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