半世紀前のインド 先進技術を人類に役立てる気概

1968年2月、インド南部のロケット打ち上げ基地で、こんな言葉を残した人がいます。

”発展途上国における宇宙活動の意義を疑問視する人々もいる。が、我々にしてみれば、その目的に曖昧さは一切ない。我々は、月や惑星の探査や有人宇宙飛行で経済先進国と競争するなどという幻想は抱いていない。しかし、我々は確信しているのだ。国においても国際社会においても、我々が意義ある役割を果たそうというのであれば、我が国にも存在している人類と社会の真の問題に対して先進技術を適用していくという点においては、我々はどこにも負けない存在にならねばならない、ということを”

出典:インド物理学研究所 サラバイの演説集 より翻訳

こう語ったのはヴィクラム・サラバイ博士。「インド宇宙開発の父」として知られる人物です。1919年生まれ。父親は有力な実業家であると同時にマハトマ・ガンジーを支援する独立運動活動家でもあった、アンバラル・サラバイ。裕福な家庭に生まれたヴィクラムは、ケンブリッジ大学で博士号を取得。その後インドで、物理学研究所、宇宙応用センター、インド経営大学院、高速増殖試験炉など様々な機関の設立に関わります。

1957年にソ連が世界初の人工衛星「スプートニク」の打ち上げに成功。ヴィクラムは人工衛星がもつ可能性を認識するとともに、インドにも独自の宇宙機関が必要であると感じ、当時のネルー首相に助言。インド国立宇宙研究委員会(INCOSPAR)の設立を導き、その初代長官に就任します。INCOSPARはやがてISRO(インド宇宙研究機関)に発展し、現在に至っています。

2023年8月23日、ISROの無人探査機は世界で初めて月の南極付近に着陸しました。この時の着陸船は、彼にちなんで「ヴィクラム」と名付けられていました。

先進技術を人類の課題解決に役立てる。その点で一番になるのだというヴィクラムの気概が、一つの頂点に達した感じがします。

インドを含めて、アジア太平洋地域は現在、経済的に大きく発展し、今後の世界経済の中心的存在になろうとしています。これからの発展を通じて、持続可能な社会をいかにして構築するか。非常に興味深いところです。

そんなことがテーマのフォーラムが開催されますので、ご案内します。

名称: 第15回 持続可能なアジア太平洋に関する国際フォーラム【ISAP2023】 
    「アジア太平洋における持続可能な社会への移行を加速する:
    統合、包摂、ローカライゼーションがもたらす変革の可能性」

日時: 2023年12月19日(火)09:00~17:45 
会場: パシフィコ横浜(横浜市)/オンライン 
主催: 公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)
参加費: 無料 

主な内容:下記HPより抜粋 

全体テーマ「アジア太平洋における持続可能な社会への移行を加速する:
統合、包摂、ローカライゼーションがもたらす変革の可能性」

・全体会合1「持続可能な社会への移行を加速する~今、そして未来~」

・全体会合2「解決策の実施(気候変動・生物多様性・循環経済):エントリーポイントと制度改革」

・パラレルセッション1, 2, 3(13:30~15:00に並行して進行)
(1)  IGES 1.5℃ロードマップ ~変革に乗り遅れない日本の未来地図~
(2) 地域循環共生圏(CES)の主流化: 
   ローカルからグローバルへのフィードバック・ループの構築に向けて
(3) アジア太平洋地域の気候安全保障:主たる論点と課題

・パラレルセッション4, 5, 6(15:20~16:50に並行して進行)
(4) COP28速報セミナー
(5) インドの大気汚染改善のための取り組み、日本の協力と今後の方向性
(6) 侵略的外来種に関する IPBES の評価: アジアへの影響

閉会セッション  ISAPを若い世代と振り返る:50年後の私たちへ

詳しくはこちらをご覧ください。
(1)IGESサイト: https://www.iges.or.jp/jp/news/20231004
(2)ISAP特設サイト: https://isap.iges.or.jp/2023/jp/programme.html